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Gang of Four
“Entertainment!” (1979)
英イングランド出身の4人組ギャング・オブ・フォーの、1979年9月にリリースされた1stアルバムだ。
彼らはパンクの次の展開をいち早く示した、いわゆる「ポスト・パンク」の代表格として知られている。
それにしても、1977年がパンクの一大ブームで、翌78年にはもうポスト・パンクが台頭し始めるのだから、当時のロック・シーンがいかに目まぐるしく変化していたかをあらためて思い知らされる。きっと楽しい時代だったんだろうな。
バンド名の「Gang of Four」は、中国の文化大革命を独裁的に主導して後に失脚・逮捕された4人組に由来する。名前からして政治色が強いわけだが、実際に彼らの歌詞は資本主義や消費社会、メディア洗脳といったテーマを扱うガチの社会派だった。
ヴォーカルのジョン・キングは後年、「俺たちがやりたかったのは、“踊れる音楽”と“考えさせる歌詞”を両立させることだった (ガーディアン紙インタビュー 2011年)」と語っている。
まあでもわたしは、歌詞よりも音だ。
ロックが政治論や社会批判を歌うのはいいけれども、その内容は時とともに古びることも多いし、いつだって思想より音楽の方が長生きするものだからだ。
なのでわたしは本作を、ファンクやダブの要素を取り入れたパンクであり、超クールなダンス・ミュージックとして楽しんでいる。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 エーテル
2 ナチュラルズ・ノット・イン・イット
3 ノット・グレイト・メン
4 ダメージド・グッズ
5 リターン・ザ・ギフト
6 ガンズ・ビフォー・バター
SIDE B
1 アイ・ファウンド・ザット・エッセンス・レア
2 グラス
3 コントラクト
4 アット・ホーム・ヒーズ・ア・ツアリスト
5 5:45
6 アンスラックス
特筆すべきはギターのアンディ・ギルだ。好きな人が聴けば一瞬でわかるが、彼はドクター・フィールグッドの初代ギタリスト、ウィルコ・ジョンソンから多大な影響を受けている。
カッティング主体のキレの良い硬質なギターの、甘ったるい酒に飽きた後に飲みたくなる強炭酸ハイボールのような、ガツンと来るドライな切れ味とクールな刺激が気持ち良い。
そのアンディ・ギルは「僕たちの音楽は“パンクのエネルギー”を持っていたが、“パンクの単純さ”は持っていなかった。(ピッチフォーク誌インタビュー 2005年)」と語っている通り、彼らは初期衝動にとどまらない、構造的で緊張感あふれるサウンドを確立した。
リズムはタイトで、ベースは躍動感があり、硬質なギターが空間をギサギザに切り裂く。歌メロの印象は薄くて、ポップな要素は少ないけれども、それが彼らにとっての「エンターテイメント!」らしい。
中でもお薦めは、わたしにとっては結構な衝撃だったA1「エーテル」、パンクのエネルギーとファンクのグルーヴが融合したA4「ダメージド・グッズ」やB1「アイ・ファウンド・ザット・エッセンス・レア」、フィードバック・ノイズを放射しながらコントロールしている実験性の強いB6「アンスラックス」などだ。
この後、ギャング・オブ・フォーは少しずつ実験性を強めたりメンバー交代を経ていくが、このデビュー作の持つ切れ味と衝撃的な輝きは唯一無二だ。
そして本作はこの後、ロックとダンスを融合していく80年代後半の英インディ系ロックを始め、90年代オルタナティヴ・ロック、そして2000年代のロックにまで、長きに渡って強い影響を及ぼすことになる。
↓ 彼らのデビュー・シングルで、代表曲として知られる「ダメージド・グッズ」。
↓ 切れ味鋭いギターとタイトなリズム隊が踊る「アイ・ファウンド・ザット・エッセンス・レア」。
(Goro)