転換点となった屈指の傑作 〜エヴリシング・バット・ザ・ガール『アンプリファイド・ハート』(1994)【最強ロック名盤500】#345

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【最強ロック名盤500】#345
Everything But The Girl
“Amplified Heart” (1994)

耳に心地よく、心が落ち着き、気持ちがリフレッシュされる。

決してオシャレなだけの音楽ではない。お金をかけて着飾った悪趣味な印象は微塵もなく、どこにでもある衣服をきれいに着こなし、手作り感のある必要最小限のアクセサリーだけの、シンプルながら心惹かれるファッションのような音楽だ。

エヴリシング・バット・ザ・ガールは、ベン・ワットとトレイシー・ソーンによる英国のポップ・デュオだ。

ベン・ワットは1983年にアルバム『ノース・マリン・ドライヴ』でソロ・デビューし、そのアルバムはわたしもこの【名盤500】のひとつにすでに挙げた。もともと彼の音楽性がわたしは好きなのだ。

しかしソロのキャリアはその1作で終え、同じレーベルのシンガーだったトレイシーと共演を果たすうちに恋愛関係となり、エヴリシング・バット・ザ・ガールとして再デビューを果たす。

本作はそんな彼らの8枚目のアルバムであり、1994年6月にリリースされた。

【オリジナルCD収録曲】

1 ローラーコースター
2 トラブルド・マインド
3 アイ・ドント・アンダースタンド・エニシング
4 ウォーキング・トゥ・ユー
5 ゲット・ミー
6 ミッ10シング
7 ツー・スター
8 ウイ・ウォーク・ザ・セイム・ライン
9 12月25日
10 ディセンチャンティッド

メイン・ヴォーカリストはあくまでトレイシーだが、「12月25日」のみベン・ワットがリード・ヴォーカルを取っている。わたしは少し陰のあるようなトレイシーの低い声も良いが、知的でありながら優しさの滲み出るようなベン・ワットの声もまた好きなのだ。

ベン・ワットは前年に、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症という難病で生死の境を彷徨い、長期入院を余儀なくされ、その回復過程で作られたのが本作だった。

その経験からか、本作の楽曲は内省的で静かなものが多いが、そのどれもが生の喜びに溢れているような印象を受ける。印象に残るメロディが多く含まれ、けれん味がなく、心に染み入る誠実な音楽だ。

アルバムは英国のチャートで20位まで上昇した。翌年に「ミッシング」がトッド・テリーの手によってリミックスされ、ダンス・チューンとしてリリースされると、全米2位、全英3位の世界的ヒットとなった。

このヒットや、トレイシーがマッシヴ・アタックなどと共演した経験などにより、次作は路線が大きく変わり、エレクトロニカの要素が強い、ダンス・ビートを導入した作品となってさらにセールスを伸ばした。

97年にはU2からツアーサポートをオファーされたが「いま以上の楽しみを求めていない」として断り、2000年には活動を停止した。

そして、出会いから26年後の2009年に、二人はめでたく結婚した。

↓ シングル・カットもされたオープニング曲「ローラーコースター」。

↓ 翌年にリミックス版が全米2位、全英3位の大ヒットとなった「ミッシング」。

(Goro)