英ロンドン出身のエルヴィス・コステロは、1970年代半ばにフリップ・シティというバンドを率いてパブで演奏していた、英国パブ・ロックの一派だ。
当時ライヴで競演していたブリンズリー・シュウォーツのニック・ロウに誘われてスティッフ・レコードと契約し、彼のプロデュースで1977年にソロ・デビューした。
初期のコステロの作風は、パブ・ロックとパンクの中間のような、ポップでもあるけど攻撃的でもあり、政治的な内容のものやイギリス社会の現状に対するシニカルな歌詞などが強い印象を残した。
また、見た目はバディ・ホリーを想起させるオールド・ロックンロール風でもあり、同時にそれが当時最新流行のニュー・ウェイヴ風でもあるという、様々な角度から注目される特異な存在でもあった。
その良い意味で八方美人的な存在感と、ポップ・センス溢れるソングライティング、そしてあの天性の声で、彼はパブ・ロック界隈からのいちばんの出世頭となった。
その後もジャズやクラシックなど、ジャンルの垣根を超えたアーティストたちと共演するなど、ロックの枠に収まらない活躍を続けている。
以下はわたしがお薦めする、最初に聴くべきエルヴィス・コステロの至極の名曲5選です。
Alison
1stアルバム『マイ・エイム・イズ・トゥルー(My Aim is True)』収録曲で、アルバム・タイトルはこの曲の歌詞の一節から取られている。初期コステロの最高傑作であり、ロック史に残る美しく情熱的な名バラードだ。
Pump It Up
2ndアルバム『ディス・イヤーズ・モデル(This Year’s Model)』からのシングルで、叩きつけるような野蛮なビートのアグレッシヴなグルーヴがカッコいい。たしかミスチルが「シーソーゲーム」でこれを真似たようなPVを作ってたな。
Oliver’s Army
3rdアルバム『アームド・フォーセス (Armed Forces)』からのシングルで全英2位まで上昇した、コステロにとって最もヒットした代表曲だ。
溢れるポップ・センスとユーモラスなPVでありながら、歌詞の内容は17世紀アイルランドで大虐殺を行ったオリヴァー・クロムウェル率いる英国軍を例に挙げて、大英帝国の覇権主義について批判したものだ。ユーモアとシリアスが同居した、コステロの持ち味が最大に生かされた名曲だ。
I Want You
11枚目のアルバム『ブラッド&チョコレート(Blood & Chocolate)』収録曲。恋人の不貞を詳細に語りながら、各行の後に「君が欲しい」と歌う、サイコパスなバラードの名曲。
Veronica
15作目にしてついにメジャー・デビューとなったアルバム『スパイク(Spike)』からのシングルで、全米19位と、コステロにとってアメリカでの最大のヒット曲となった。ポール・マッカートニーとの共作で、ベースもポールが弾いている。
入門用にエルヴィス・コステロのアルバムを最初に聴くなら、『ベスト・オブ・エルヴィス・コステロ~ファースト 10イヤーズ』がお薦め。初期の代表曲はほぼ網羅されています。
その後のワーナー時代は『エクストリーム・ハニー:ベスト・オブ・ワーナー・ブラザーズ・イヤーズ』で。
(Goro)