Eggs Over Easy
Henry Morgan (1970)
エッグズ・オーヴァー・イージーは、米カリフォルニア州で結成されたバンドだ。
パブ・ロックの起源は、彼らがレコーディングのためにイギリスを訪れたことから始まる。
エッグズ・オーヴァー・イージーは、元アニマルズのチャス・チャンドラーに招かれ、はるばるロンドンへとやってきた。彼のプロデュースで1stアルバムをレコーディングするためだった。
そしてその滞在中、毎週月曜の夜にはロンドン北西部の『タリー・ホー』というパブで演奏した。これはバンドの滞在費用を少しでも稼ぐためのアルバイトだった。
レコーディングは完了したが、しかし様々な事情でアルバムは発売されず、お蔵入りとなってしまった。
バンドは失望したが、しかしすぐには米国に帰らず、『タリ・ホー』での演奏を続けた。彼らの音楽はザ・バンドやイーグルスのチープなコピーみたいなものだったが、イギリス人には新鮮だったのか、ライブは盛況だったという。
そんな彼らと親交を深め、影響を受けたのがニック・ロウ率いるブリンズリー・シュウォーツで、エッグズを真似て、演奏させてくれるパブを探して出演するようになったのが、パブ・ロックの始まりと言われている。
エッグズ・オーヴァー・イージーの音楽自体はそれほどのものでもないが、もし彼らがロンドンにやって来て、パブで演奏していなければパブ・ロックはなく、パブ・ロックがなければその後のロンドン・パンクもあったかどうかわからない。ロック史的には重要なバンドと言えるだろう。
この曲は、ロンドンでレコーディングしたものをアメリカに帰国後に部分的に録り直し、ようやく陽の目を見た1stアルバム『グッド・アンド・チープ』の収録曲だ。
歌い出しがザ・バンドっぽくて、オッと思わせるが、演奏のクオリティや音楽的な深みは当然かなわない。それでもこれがパブで演奏されていたら、たしかにちょっといいかもな、とも思う。
1981年に2ndアルバムもリリースされたが、直後にレーベルが廃業してしまったため、流通は少なく、CD化もされることはなかった。
ロック史的に重要な役割を果たした割には、いろいろとツイていないバンドではある。
(Goro)