エディ&ザ・ホット・ロッズ『十代の爆走』(1976)【最強ロック名盤500】#230

Teenage Depression [12 inch Analog]

⭐️⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#230
Eddie and the Hot Rods
“Teenage Depression” (1976)

英国パブ・ロックなら、ドクター・フィールグッドと同郷(英エセックス州キャンベイ島)のエディ&ザ・ホット・ロッズも忘れてはならない。とっくに忘れられてるという説もあるが、だとしたらこれを忘却の彼方に放置しておくのはあまりにも勿体無い。

パブ・ロックというか、彼らはもうあと一歩でパンク、というところまで来ていた。彼らは同郷のドクター・フィールグッドに大きな影響を受け、大音量でつんのめるように疾走する、ソリッドでベキバキなロックンロールをがなり立てた。

本作は1976年11月にリリースされた、エディ&ザ・ホット・ロッズの1stアルバムである。そして、この3日後にセックス・ピストルズのデビュー・シングル「アナーキー・イン・ザ・U.K.」がリリースされたことは彼らにとって不運だったかもしれない。たったの3日の差で彼らは「パンク以前の人たち」になってしまったからだ。逆に、本作のリリースがもう少し遅れて、「アナーキー」より後だったなら、彼らもパンクに括られ、ムーヴメントの中心にいたかもしれなかった。

エディ&ザ・ホット・ロッズとセックス・ピストルズが険悪な関係だったのは、当時はよく知られていたらしい。

ロンドンの有名なライヴ・ハウス〈マーキー・クラブ〉にホット・ロッズが出演した際、その前座を務めたのがデビュー前のセックス・ピストルズだった。NME誌はそのライヴを記事にしたが、書かれていたのはピストルズのことのみで、ホット・ロッズの演奏には触れてもいなかったという。さらにその共演時にピストルズがホット・ロッズの機材を壊してしまったことで険悪な関係になり、その後に予定されていたツアーの前座からピストルズを外してしまう。それをまたNME誌は「本物のパンクと出会ってしまった結果」と表現して記事にした。残念ながら、ここでもホット・ロッズはパンク・ムーヴメントと自ら距離をとってしまい、脚光を浴び損ない、忘れ去られていく運命となってしまったのだった。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 ゲット・アクロス・トゥ・ユー
2 ホワイ・キャント・イット・ビー
3 ショウ・ミー(ジョー・テックスのカバー)
4 オール・アイ・ニード・イズ・マネー
5 ダブル・チェッキン・ウーマン
6 キッズ・アー・オールライト(ザ・フーのカバー)

SIDE B

1 十代の爆走
2 ホースプレイ
3 ビーン・ソー・ロング
4 シェイク(サム・クックのカバー)
5 オン・ザ・ラン

A1「ゲット・アクロス・トゥ・ユー」からいきなり疾走感あふれる最高のドラムと荒っぽいギターの音にシビれる。1stアルバムの1曲目というのはそのバンドのイメージを決めかねない重要な1曲だ。その意味では最高のオープニングである。なんとなく、ローリング・ストーンズの1stアルバムのオープニング「ルート66」を思い出したりもする。

2曲目以降もR&Bのカバーやザ・フーの名曲のカバーなどを挟みつつ、エネルギッシュでタイトな、バキッと立ったサウンドのロックンロールのストレート・パンチが繰り出される。まさにブリティッシュ・ロックの原点回帰だ。

ジャケットもインパクト大だし、英国パンクの源流としてもっと聴かれていい名盤であり、もっとリスペクトされていいバンドだと思う。

ちなみに、バンド名の「エディ」だが、そういう名前のメンバーは初めから存在しない。そういうバンド名のつけ方ってカッコいいなあ、とも思ったものだ。

↓ オープニングを飾る、疾走感あふれる「ゲット・アクロス・トゥ・ユー」。

↓ 彼らの3枚目のシングルで、全英35位と初めてチャート入りを果たした「十代の爆走」。

(Goro)

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