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Deep Purple
“Machine Head” (1972)
わたしがこのアルバムを初めて聴いたのは、1年と少し前のことである。
遅いでしょう。
わたしより少し上の世代のロック・ファンたちには、このディープ・パープルを筆頭に70年代ハード・ロックは日本で大人気だったけれども、わたしはその次の時代の、パンクやニュー・ウェイヴの世代だったのだ。
だからハード・ロックも、その筆頭のディープ・パープルももはや一時代前の古いものに感じて、「ダッセえ!」と思っていた。
その後も、パンク派のわたしにとってハード・ロックは「敵性音楽」の印象が抜けず、まあこんな歳になるまで聴いてこなかったわけである。
でも2年ぐらい前から、そろそろこの【最強ロック名盤500】という連載をやりたいと思いはじめて、さすがに「ハード・ロックはよく知らんので対象外」では無理だなと思い、ならばこの辺でちょっと食わず嫌いの克服を試みてみようということで、ハード・ロックの名盤と世間で名高いものを片っ端から聴き散らかし、その感想を当時【食わず嫌いロック】という連載記事で書いたものである。その第一発目がこの『マシン・ヘッド』だったのだ。
1972年3月にリリースされた、ディープ・パープルの6枚目のアルバムである。全英1位、全米7位、そして日本でもオリコン6位と大ヒットした。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 ハイウェイ・スター
2 メイビー・アイム・ア・レオ
3 ピクチャー・オブ・ホーム
4 ネヴァー・ビフォア
SIDE B
1 スモーク・オン・ザ・ウォーター
2 レイジー
3 スペース・トラッキン
家族が出掛けるのを見計らい、家に独りになっところで、大音量で聴いた。
アルバムは聴いてなくても、「ハイウェイ・スター」や「スモーク・オン・ザ・ウォーター」はもちろん知っている。しかしアルバムトータルで聴いてみると、単品で聴いたのとはまた随分印象が違って聴こえるものだ。
めちゃくちゃいいじゃないか、と思ったものだ。
名盤だな、と思ったものだ。
ちょっと気づくのが、50年ほど遅れたけれども。
ギターもベースもいい。
ああリッチー・ブラックモアな。名前はよく知ってる。顔は知らないけど。ロジャー・グローヴァーは初めて聞く名前だけど、変態的なオルガンがまたサウンドを独特なものにしている。
意外とやかましくはないし、暑苦しくも感じない。
リマスターされているのか、音にリアルな迫力があるうえに、ツヤツヤしてキレイだな。聴けるな、ハード・ロック。
早速ハード・ロックがちょっと好きになった気分だった。やっぱり食わず嫌いだったんだな。
なんだってわざわざお金を払ってそんなクソ辛いものを食べるのか意味不明、と長年思っていたこの地方の名物「台湾ラーメン」を40過ぎてから初めて食べたときのことを思い出した。舌が痺れ、滝のような汗をかきながら、こんな美味いものがあったのか、と思ったものだった。
わたしが年齢を重ねた今だから聴けるということもあるのかもしれない。
この時代にハード・ロックを聴くというのがまた新鮮でもある。
なんだか、まだ開けていなかった宝の箱を見つけた気がしたものだ。
2024年、時代遅れの恐竜のようなハード・ロックが、かくも生き生きとカッコよく聴こえる。
↓ アルバムのオープニングを飾る代表曲「ハイウェイ・スター」。
↓ シングル・カットされて全米4位の大ヒットとなった「スモーク・オン・ザ・ウォーター」。
(Goro)