デヴィッド・ボウイ『ジギー・スターダスト』(1972)【最強ロック名盤500】#185

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#185
David Bowie
“The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars” (1972)

永遠に宇宙空間を漂い続ける絶望的に孤独な生命体から送信された、地球上の孤独な若者だけが受信できる秘密のメッセージのような音楽。

「大丈夫、死ぬときはもろともだ」

若き日のわたしは深夜にヘッドホンで本作を聴きながら、そんな謎のメッセージを受け取った気がして、少しだけ心が安らいだものだった。

イタいなあ、と思われても仕方がない。

当時のわたしは、日本を代表する孤独な若者の気分だったのだ。
今から思えば、どこにでもいる普通の若者だったのだけれども。

この神アルバムには、特別な魔力がある。

わかりやすく、親しみやすいロック・ミュージックでありながら、どこか絶望的な寂しさと哀しみが漂う。そして、それに抗おうとする、孤独な戦いの決意にも聴こえる。

本作は、1972年6月に発表されたデヴィッド・ボウイの5作目のアルバムである。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 5年間
2 魂の愛
3 月世界の白昼夢
4 スターマン
5 イット・エイント・イージー

SIDE B

1 レディ・スターダスト
2 スター
3 君の意志のままに
4 屈折する星くず
5 サフラゲット・シティ
6 ロックン・ロールの自殺者

A4「スターマン」がシングル・カットされ、全英10位のヒットとなった。ボウイのシングルがチャート入りしたのは「スペース・オディティ」以来3年ぶりのことであり、一発屋になりかけていたボウイを救った復活作となったのだ。

バンドは前作『ハンキー・ドリー』で集められたメンバーを再招集し、本作では〈ザ・スパイダーズ・フロム・マーズ〉と名付けられた。

本作の、”The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars”という長い長い原題は「ジギー・スターダストとザ・スパイダーズ・フロム・マーズの栄光と没落」とでもいう意味だ。現在の邦題は『ジギー・スターダスト』であるが、発売当時の邦題は『屈折する星屑の上昇と下降、そして火星から来た蜘蛛の群』という全直訳のものすごいものだった。

5年後に迫る人類滅亡の危機に、救世主として異星からやってきたバイセクシャルのロックスター、ジギー・スターダストの栄光から没落というテーマを軸に、ロック・ミュージックの不自然さや虚像、ドラッグ問題、政治問題、セクシュアリティなどについても歌われる。

ボウイはロックスターの虚像をあえて演じながら、ロックと時代が抱える問題について歌ったのだろう。

B4「屈折する星くず」、つまり「ジギー・スターダスト」は、デヴィッド・ボウイを象徴する代表曲だ。一度聴いたら忘れられない、心に余韻を残す名曲である。他にも、泣きメロに心奪われるB1「レディ・スターダスト」や超絶カッコいいロックンロールのB5「サフラゲット・シティ」など、名曲だらけのコンセプト・アルバムであり、デヴィッド・ボウイの最高傑作である。

アルバムは全英5位、全米21位のヒットとなった。

当時のイギリスの少年少女たちの間でブームとなった〈グラム・ロック〉を代表する人気作となり、そして70年代ロックの最高峰に数えられる名盤として、その後も永く愛された。

発展途上の若者には特にハマりやすく、特別な愛着や思い入れを持ちやすい作品だと思う。アナログ・レコードならジャケットを部屋の壁に掛けたくなるだろう。

現代にもきっといるはずの、かつてのわたしと同じく孤独でイタい若者たちにも、ぜひ聴き継がれてほしいアルバムだ。

↓ デヴィッド・ボウイを象徴する永遠の名曲「ジギー・スターダスト」。

↓ 全英10位のヒットとなり、復活作となった「スターマン」。

(Goro)

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