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Creedence Clearwater Revival
“Cosmo’s Factory” (1970)
初めてC.C.R.を聴いたのは18ぐらいのときだったと思う。20曲ぐらい入ってるベスト盤CDだった。
とくに強烈な印象を受けた記憶はないものの、それでもまだ洋楽をたいして広くも深くも聴いていないわたしでも親しみやすい印象で、何曲かはすぐに好きになり、バンドに好感を持った。
わたしはその後、パンクに目覚めたり、オルタナティヴ・ロックに夢中になったり、急にソウルが好きになったり、はたまたクラシックにハマったりと、色々な音楽を好きになったり、飽きたりした。
そして26歳のときに初めて小さな車を購入すると、再びC.C.R.のベスト盤をときどき車の中で聴くようになった。とくに長距離のドライヴのときには聴きたくなったものだ。
C.C.R.の音楽はシンプルだ。これ以上シンプルなロックを思いつかないほどだ。
サウンドもシンプルなら、メロディもシンプルなものである。余分なもの、誇張されたもの、奇をてらったものがなにもない。だから飽きない。だからわたしはC.C.R.が好きだ。
若い頃は流行のファッションもいろいろ試してみたけれども、結局Tシャツとジーンズがいちばん楽でいいや、みたいな感じである。
若い頃はいま流行しているものの目新しさに心を奪われ、それこそが最上のものと感じてしまう。でも年を取りながらそんな流行り廃りを何度も通過してくると、流行り廃りに関係なく、自分に合ったものがようやく見えてくるようになる。
C.C.R.はその意味で、一生聴いていられる音楽だといつのまにか思うようになっていたものだ。
本作はC.C.R.が1970年7月にリリースした、5枚目のアルバムだ。
本作はアメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、フィンランド、ノルウェーで1位を獲得する世界的ヒットとなった。日本でもオリコン10位のヒットとなっている。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 ランブル・タンブル
2 ビフォア・ユー・アキューズ・ミー
3 トラヴェリン・バンド
4 ウービー・ドゥービー
5 ルッキン・アウト・マイ・バック・ドア
6 ジャングルを越えて
SIDE B
1 アップ・アラウンド・ザ・ベンド
2 マイ・ベイビー・レフト・ミー
3 フール・ストップ・ザ・レイン
4 悲しいうわさ
5 光りある限り
本作からは両A面シングルが3枚リリースされ、いずれも大ヒットした。
「トラヴェリン・バンド/フール・ストップ・ザ・レイン」(全米2位)
「アップ・アラウンド・ザ・ベンド/ジャングルを越えて」(全米4位)
「ルッキン・アウト・マイ・バック・ドア/光りある限り」(全米2位)
本作からわたしの好きな曲を3曲挙げると「フール・ストップ・ザ・レイン」「ジャングルを越えて」「アップ・アラウンド・ザ・ベンド」の順になるかな。
C.C.R.は全部で7枚のアルバムを残し、1972年10月に解散した。実質的な活動期間は4年程度と、そのヒット曲の多さの印象からはかなり短い。
C.C.R.はその成功への過程でひとつの決断を迫られた。
バンドのメンバーたちは当初から、ビートルズのように各々が曲を書き、各々で歌うバンドを望んでいた。
しかしジョン・フォガティは、彼らをソングライターとしても、シンガーとしても評価していなかったため、バンドを成功させるためには自分がすべての曲を書き、すべて歌うべきだと主張した。メンバーは彼の言うことを理解しなかったが、ジョンは「もう二度と洗車場で働きたくないんだ」と怒鳴って彼らを黙らせた。その結果、C.C.R.はヒット曲を連発し、アメリカで最高のバンドと評価されるほどの大成功を収めた。
しかしジョンの専制的ともとれるバンド運営に対し、弟のトム・フォガティを筆頭にメンバーの不満は募っていった。そしてジョンはついに態度を軟化させ、メンバーが書いた曲を採用し、歌わせることにした。
1972年4月にリリースされた『マルディグラ』は、そんなバンドの”民主制”を強調した作品となった。
しかし(案の定)アルバムは酷評され、売れ行きも低調だった。
映画でも音楽でもそうだが、芸術やエンターテイメントに民主制などというものを導入するとろくなことにならない。
『マルディグラ』のリリースから半年後に、C.C.R.は解散した。
わたしの想像では、メンバーの望み通りのアルバムを作ればどんな結果になるか、ジョンには初めからわかっていたのだと思う。それをあえてやったのは、もう彼はC.C.R.を続けていく情熱を完全に失っていたのだろうと思う。
↓ 全米4位のヒットとなった「アップ・アラウンド・ザ・ベンド」。ハノイ・ロックスによるカバーも日本で人気を博した、。
↓ 全米2位の大ヒットとなった「フール・ストップ・ザ・レイン」。C.C.R.の全楽曲の中でも最も好きな曲のひとつだ。
(Goro)