Cocco – 強く儚い者たち (1997)
作詞:こっこ 作曲:柴草玲 編曲:根岸孝旨
思い出深い曲だ。
ちょうどわたしが職を転々としていた迷走時代を終えて、レンタルビデオのチェーン店で働くようになった頃だ。わたしはもはや30歳を過ぎ、そろそろ腰を落ち着けなければと、その会社で正社員になることにしたのだった。
ビデオとCD、CDシングルのレンタルをしている店だったけれども、入社したばかりのわたしがレジの操作や接客を学び、ビデオやCDの返却に店内を走り回っていた頃、ヒット中のCDシングルの中でもとりわけお客さんから問い合わせが多かったのがこの曲だった。
とにかくいつもレンタル中で、借りたいお客様から「まだ返ってきてないか」「いつ返ってくるのか」という問い合わせがとにかく多かったのだ。
当時はまだまったく無名の歌手だったので、そもそも当初の仕入れ枚数が少なかったらしい。そしてお客さんの声に応えて追加をしようにも、生産が追いつかないのか、問屋への割り当てが少ないのか、バックオーダーしてもなかなか入荷しないのだ。
突然ブレイクしたアーティストというのはえてしてこういう現象になりがちだった。Kiroroの「長い間」や、宇多田ヒカルの「Automatic」なんかもそうだった。
1997年11月にリリースされた、Coccoの2ndシングルで、大ブレイク作だ。
オリコンチャート最高位が18位というのが意外なほど、もっとヒットした印象があった。それほどこの曲のインパクトが凄まじかったということかもしれない。
それまで洋楽一辺倒で、「J-POPってなに? 歌謡曲なら知ってるけど」なんて言ってたわたしがお店で働き始めて最初に興味をそそられ、自分でもレンタルして聴いてみた思い出がある。
だけど トビウオのアーチをくぐって
宝島に着いた頃 あなたのお姫様は
誰かと 腰を振ってるわ
人は強いものよ とても強いものよ
(強く儚い者たち/作詞:こっこ 作曲:柴草玲)
わたしは唖然とした。
おいおい、もう綺麗ごとを歌う時代は終わったのか、と衝撃を受けたのだ。知らない間に日本の歌謡曲は、新しいステージに上がってたんだな、という感じだった。いいぞ、もっと正直に、もっとズバリいきましょう、と応援したくなった。
この曲はまた、90年代アメリカで流行したオルタナティヴ・ロックのテイストが取り入れられているのも良かった。アラニス・モリセットなんかも思い出した。
Coccoって、なんだかいつも魂を削りながら歌っているような姿が痛々しくもあるけれど、だからこそ心に深く刺さるのかもしれない。
(Goro)
