ブリンズリー・シュウォーツは、ギタリストのブリンズリー・シュウォーツと、学友でベーシストのニック・ロウが中心となって結成し、1970年にデビューしたイギリスのバンドだ。
記者を集めての大々的なデビュー・プロモーション・ライヴを企画したものの、機材トラブルなどで大失敗し、最悪のスタートをきったブリンズリー・シュウォーツは、1stアルバムもまったく売れなかった。失意の底にあった頃に、ロンドンのパブで演奏していた米サンフランシスコのバンド、エッグズ・オーバー・イージーに出会う。
エッグズは1stアルバムのレコーディングのためにロンドンを訪れていたのだが、それが中途で頓挫してしまい、そのままアルバイト的にロンドンのパブで演奏をしていたのだった。
ブリンズリー・シュウォーツはエッグズの、カントリーなどを基調としたアメリカ南部の土の香りのするような音楽性や、客のリクエストに次々と応えて演奏するスタイルに影響を受け、彼らと親交を深めて自らもパブに出演するようになった。そして、それがいわゆる〈パブ・ロック〉の始まりだったと言われる。
ブリンズリー・シュウォーツはライヴ活動で人気を博し、6枚のアルバムを発表したが、しかし大きな商業的成功を収めることはなく、1975年に解散した。
その後、ニック・ロウはソロ・アーティストとしてヒット曲も出しながら、パンク・ニューウェイヴ世代たちのプロデューサーとしても活躍した。
後にパンクのDIY精神や原点回帰の下地となったパブ・ロックが再評価されると、その元祖であるブリンズリー・シュウォーツもその味わい深い音楽性が再評価され、伝説的なバンドとして聴き継がれていったのだった。
以下はわたしがお薦めする、最初に聴くべきブリンズリー・シュウォーツの必聴名曲5選です。
Country Girl
2ndアルバム『ディスパイト・イット・オール(Despite It All)』のオープニング・トラックで、ニック・ロウの作。初期ブリンズリーの代表曲だ。
エッグズ・オーバー・イージーとパブで競演し、影響を受けていた頃で、まるで後期ザ・バーズのようなコテコテのカントリー・ロックとなっている。当時のイギリスのバンドとしては極めて個性的なスタイルだったと言えるだろう。
Dry Land
傑作3rdアルバム『シルヴァー・ピストル(Silver Pistol)』のオープニングを飾る、陽気なホンキー・トンク・ワルツ。
エラいもので、パブで演奏するうちにやっぱりその場所や客層に合った作風になっていくものなのかもしれない。ビールをガブ飲みしながら聴くならやっぱりこんなノスタルジックで楽しい音楽がいい。
Nightingale
3rd『シルヴァー・ピストル』からのシングル(もちろん売れなかったが)。アルバム屈指の美しいワルツだ。
ニック・ロウの作で、一見地味な小曲のようだけど、いかにも彼らしい英国的なポップ・センスが光る佳曲だ。
Merry Go Round
これも『シルヴァー・ピストル(Silver Pistol)』収録曲でニック・ロウの作。ブリンズリーの曲でわたしが最初に好きになった曲だった。
彼らが「英国のザ・バンド」と評されるのも頷ける、ノスタルジックな空気を醸成するキーボードの響きが心地よい。イアン・ゴムのギターも良い感じだ。
(What’s So Funny ‘Bout) Peace, Love, And understanding
デイヴ・エドモンズをプロデューサーに迎えた6作目にしてラスト・アルバム『ニュー・フェイヴァリッツ・オブ・ブリンズリー・シュウォーツ(The New Favourites of… Brinsley Schwarz)』の超ポップなオープニング・トラック。
後にエルヴィス・コステロがカバーしてヒットしたことでも知られる、ブリンズレー・シュウォーツの代表曲として常に挙げられる名曲だ。
ブリンズリー・シュウォーツは、前期のカントリー・ロック的な作風と、後期のポップな作風のものが好きなファンとに分かれるようだ。わたしは前期派なのでやっぱり最初に聴くなら名盤3rd『シルヴァー・ピストル』をお薦めしたい。
(Goro)