ブームタウン・ラッツ/哀愁のマンデイ (1979)

I Don't Like Mondays - Wikipedia

【70年代ロックの名曲】
Boomtown Rats
I Don’t Like Mondays (1979)

ブームタウン・ラッツは1977年にデビューしたアイルランドのバンドだ。 

この曲は彼らの3rdアルバム『哀愁のマンデイ』に収録され、全英1位となったシングルだ。 

この曲は、1979年1月に米カリフォルニア州サンディエゴで起こった衝撃的な事件について歌われている。 

1月29日月曜日、16歳の少女ブレンダ・アン・スペンサーは、自宅の向かいにある小学校に向けてライフル銃を乱射し、6時間に及ぶ犯行により、校長と主任用務員が死亡、子供たち8名と警官1名が負傷するという凄惨極まりない事件だった。 

ブレンダはその動機を「理由なんてないけど、面白かったから。月曜日が嫌いなの(I Don’t Like Mondays)」と語った。彼女のその言葉がこの曲のタイトルとなっている。 

この曲は、「理由なんてわからない、理由なんてないんだから」と繰り返し歌われる。

きっとそうなのだろう。
小学生をライフル銃で殺しまくる理由なんて、あるわけがないのだ。 

少女が使ったライフル銃は狩猟用のもので、誕生日に州立大学の学長を努める父親からプレゼントされたものだった。素晴らしい地位をもつ裕福な家庭の父親は、素晴らしい家庭に育った娘がまさか銃で小学生を撃つとは夢にも思わなかったに違いない。 

今から40年以上前に起きた事件で、その後もアメリカではたびたび悲劇的な銃乱射事件が繰り返されているが、一向に銃の規制を進めようとしないのは、アメリカの根深い病理のようにも思える。 

もともとが、銃による殺戮で原住民を制圧してアメリカ大陸を征服し、アフリカから連れてきた奴隷を銃による恐怖で従わせて富と地位を築いてきた白人にとって、銃は白人支配による自由主義社会を成立させるための根源的なパワーであり、アイデンティティでもあるのだろう。 

われわれ日本人は、銃なんて規制したらいいのにと簡単に思うのだけれど、アメリカ人にとって銃を手放すということは、国家の礎を引っこ抜かれ、社会の構造がガラガラと崩れ落ちて、反乱と復讐の恐怖に晒されるようなものなのかもしれない。 

ただし、銃が規制されている日本でも、また別の手段で無差別殺人は何度も起こっている。
そしてもちろん、そのほとんどの動機には、納得のいく理由など何もない。 

そもそも肉塊と水気のものだけで出来たこの動く物体が、ものを考えたりペチャクチャ喋ったりしていることが奇跡のようなものだ。

悲しむべきことであり、そして恐るべきことであるが、ときどきこの肉塊と水気の物で出来た動いて喋って感情を持つモノは、やはりときどき安定を失い、壊れてしまうものらしいのだ。 

肉塊と水気の微妙な秩序の崩壊とそれが引き起こす日常の崩壊を、完全に防ぐ方法は無いのかもしれない。 

ブレンダは無期懲役となり、カリフォルニア女子刑務所に服役している。これまでに6度、仮釈放を申請しているがいずれも却下された。

現在63才で今も服役中だ。
次に仮釈放申請の資格を得るのは、2025年である。

(Goro)