Bob Dylan “New Morning”
前作の『セルフ・ポートレイト』が大不評だったというのもあってか(笑)、そのわずか4か月後に緊急リリースされた、ディラン29歳のアルバム。全米7位、全英1位。
そう思うとなんだかジャケの表情も、不祥事を起こした後の謝罪会見のときの表情みたいにも見えてくるから不思議なものだ。
本作は全曲オリジナルであり、声もカントリー・ヴォイスからディラン・ヴォイスに戻していて、批評家たちをひと安心させたらしく、久々の高評価を受けたようだ。ジャケも真面目だしね。
このアルバムの特徴的なところは、ディランが半分以上の曲でギターではなく、ピアノで弾き語りをしていることだ。
1曲目の「イフ・ナット・フォー・ユー」は、ジョージ・ハリスンやオリビア・ニュートン=ジョンのカバーでも有名だ。
他にも「せみの鳴く日(Day of the Locusts)」や「新しい夜明け」など好きな曲もあるけど、なんとなく全体にキレの悪いサウンドにわたしは聴こえてしまう。ピアノのせいかな。
女声コーラスが入ったり、ジャズやゴスペル風の曲があったりと、その後の方向性を予感させるアルバムでもあり、その意味では『新しい夜明け』というタイトルは的を射ていると言っていいけれども、朝靄がかかって未だ薄暗く、晴れるのか崩れるのかよくわからない、そんな感じの夜明けのようにも感じる。
↓ 「イフ・ナット・フォー・ユー(If Not for You)」
↓ 「新しい夜明け(New Morning)」