⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
Bob Dylan
“Highway 61 Revisited” (1965)
この世に怖いものなし、ついに天下獲ったぜ、の殿様みたいな顔をしとるな。
ディランのアルバムは、ジャケットのディランの表情でその自信の程が窺える気がする。ディランの写真すら使っていないジャケットは、やはりなんとなく自信無さげなものが多い気がするように思う。
その意味では、このアルバムほど自信満々の表情をしたものは他にない。最高傑作をものにしたという意識が間違いなくあったのだろう。
前作『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』からたった5か月後という間隔で1965年8月にリリースされた、歴史的名盤だ。
全米3位、全英4位と、前作を上回る大ヒットとなった。ディラン24歳、バンドという新たな武器を手にして、創作意欲が怒涛の勢いで溢れ出した頃だったのだろう。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 ライク・ア・ローリング・ストーン
2 トゥームストーン・ブルース
3 悲しみは果てしなく
4 ビュイック6型の想い出
5 やせっぽちのバラッド
SIDE B
1 クイーン・ジェーン
2 追憶のハイウェイ61
3 親指トムのブルースのように
4 廃墟の街
ディランの代表曲であり、アメリカン・ロックの歴史における最重要曲と言っても過言ではない「ライク・ア・ローリング・ストーン」でアルバムは幕を開ける。
見学に来ていたアル・クーパーが飛び入りで参加して弾いたハモンド・オルガンは偶然の産物ながら、この曲を名曲にすることに決定的な役割を果たしている。この曲は全米2位と、ディランにとって最大のヒット曲となった。
A2の「トゥームストーン・ブルース」を聴けば、このアルバムが決して楽しいだけのポップアルバムではないことがわかる。そして、A5「やせっぽちのバラッド」、B1「クイーン・ジェーン」、B2「追憶のハイウェイ61」、B3「親指トムのブルースのように」、B4「廃墟の街」など、決して聴きやすくもないが、圧倒的な「強さ」を持つ曲がズラリと並ぶ、尖りまくってバキバキな最強のディランが聴けるアルバムだ。
前作からさらに進化して、バンドアレンジも、ブリティッシュ・ビートの真似でもなく、シカゴ・ブルースの真似でもなく、独自のサウンドを模索している。
当時のブルース・ロックを代表するギタリスト、マイク・ブルームフィールドをギタリストに迎えているが、ディランは彼に「B・B・キングみたいなのはやめてくれ。もっと新しいものが欲しいんだ」と要求したという。きっとその賢明な指示のおかげでこの、ブルースを多く含んだアルバムでは、当時の白人ブルースバンドたちによくあった耐え難く退屈なプレイを聴かされずに済んだのだろう。
録音のせいもあるのだろうけど、ギターにしてもピアノにしてもハモンドオルガンにしてもその他の楽器にしても、キレイに耳当たりよく聴かせようとする気などまったくないような荒々しい音が、このアルバムに漲るエネルギーを感じさせる。
本作の登場によって、ロックはまた新たなステージへと上昇した。
大盛り上がり中のブリティッシュ・ビート・バンドたちにも甚大な影響を及ぼした。
この圧倒的なオリジナリティと緊張感の漲るロックアルバムの前では、もはやR&Bのカバーや、少女たちに嬌声を上げさせるだけのポップソングをやってる場合ではなくなったのだ。
↓ 全米2位の大ヒットとなった「ライク・ア・ローリング・ストーン」。
↓ 圧倒的なスピード感と緊張感の「トゥームストーン・ブルース」。ブルームフィールドのギターも聴きものだ。
(Goro)