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Blue Öyster Cult
“On Your Feet or on Your Knees” (1975)
「生活に刺激がなく、ストレスが溜まりがち」
「仕事や勉強に忙しく、ロック不足に陥りがち」
「熱いシャワーを浴びるように、全身にギターの爆音を浴びたい」
そんな症状の方にぜひお奨めしたいのが、本作である。
ブルー・オイスター・カルトは、ニューヨークのCBGB界隈で活動していたハード・ロック・バンドだ。そのためどことなくN.Y.パンクに通じるアンダーグラウンド臭がする。
通算4枚目、1975年2月にリリースされた本作は、2枚組ライヴ・アルバムである。
1967年に結成して以来、バンドにとって不遇な日々が続いたもののの、本作の全米22位というヒットによってブレイクを果たした。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 The Subhuman
2 Harvester of Eyes
3 Hot Rails to Hell
SIDE B
1 The Red & the Black
2 Seven Screaming Dizbusters
3 Buck’s Boogie
SIDE C
1 Last Days of May
2 Cities on Flame
3 ME 262
SIDE D
1 Before the Kiss (A Redcap)
2 Maserati GT (I Ain’t Got You)
3 Born to Be Wild
メタリカのドラマー、ラーズ・ウルリッヒの「史上最高のライヴ・アルバム」という賛辞につられて聴いてみたわたしは、一聴して気に入った。
オープニングこそ聴きやすい曲調の徐行運転でスタートするが、2曲めの後半あたりからエンジンがかかり、SIDE Bに入ったところでターボ・スイッチが入り、さらに曲が進むにつれ、どんどん演奏のテンションが上がっていくのが物凄い。見たわけではないが、ギタリストの目が血走り、ベーシストが髪を振り乱し、ドラマーが汗を撒き散らすのが目に浮かぶようですらある。
これを当時「全然売れていないアメリカのバンドのライヴ盤」として何気に聴いた人たちは泡を吹いてのけぞったのではないかと想像する。
演奏能力が高く、ツインギターのはっちゃけた激奏でガンガン突き進む曲だけでなく、バラードなどもなかなか聴かせる。
C3「ME 262」では元々のギター二人とヴォーカリストも合わせたトリブルギターで始まり、途中でドラマーもギターに持ち替え、ギター四本とベース1で演奏するという、実験精神なのかサービス精神なのかよくわからないものを発揮していて、こういうところもまた面白い。
ヒット曲もなければ有名曲もないのに、その演奏の説得力と凄絶さで最後までグイグイ聴かせ、盛り上げる。観客が我を忘れて熱狂しているのがよくわかる、火傷しそうに熱い爆演ライブだ。
こういうのを「ライヴ・バンド」と言うのだろうな。
バンドの実力というのはヒット曲の数やスタジオ・アルバムの出来だけではないということをあらためて再認識させられた。たとえ名曲なんてなくても、ライヴが強いバンドはやっぱり強いのだ。
アルバムの原題は”On Your Feet or on Your Knees(立ち上がるか、ひざまずけ)”だが、これはアンコールの「ワイルドで行こう」の前に、飛び入りらしき女性がマイクで叫んでいる言葉から取られている。
この女性が、当時このバンドのキーボーディストと付き合っていた、後のN.Y.パンクの女王、パティ・スミスである。
↓ 彼らのデビュー・シングルで代表曲でもある「Cities on Flame With Rock and Roll」。
↓ 途中でドラマーもギターに持ち替え、ステージに5人が並んでギターを弾きまくる人気曲「ME 262」。
(Goro)