1960年代初頭のフォーク・ブームは、当時〈フォーク・ミュージック・リヴァイヴァル〉と呼ばれた。
「フォーク・ミュージック」は、古くから伝わる民謡や伝承曲、時事問題を歌にした「トピカル・ソング」、反体制的な「プロテスト・ソング」なども含めて、基本的にアコースティック・ギターやバンジョーなどの伴奏で歌われる音楽だ。
1940年代から50年代にかけてウディ・ガスリーやピート・シーガーなどが活躍したが、赤狩りの時代に一度沈静し、60年代初頭にベトナム戦争や公民権運動など、社会問題への意識の高まりと共に再びアメリカで再興した。
そして、ウディ・ガスリーを師と仰ぐボブ・ディランの登場によって、フォーク・ブームは世界的に波及し、日本でも1970年前後に一大ブームとなっている。
このフォークのブームは、ルーツ・ミュージックのひとつとして音楽的にロックに影響を与えているのはもちろんだが、なにより、自分で作詞・作曲をして、自分の想いを歌うという、D.I.Y.精神とアティテュードがより大きな影響を与えた。
その意味でこの時代の〈フォーク・ミュージック・リヴァイヴァル〉も、ロックの源流のひとつと言えるだろう。
ここではそんな、60年代の〈フォーク・ミュージック・リヴァイヴァル〉において中心的な存在として活躍した10組の代表曲を紹介したいと思います。
Woody Guthrie – This Land is Your Land
フォーク・リヴァイヴァル以前、1940年代から50年代にかけて活躍し、アメリカのフォーク・ミュージックに最も大きな影響を与えたのがこのウディ・ガスリーだ。
この曲は、戦時中に生まれた愛国的な歌「ゴッド・ブレス・アメリカ」に対するアンサー・ソングとして書かれた、彼の代表曲だ。彼は社会主義者で、労働組合の活動家でもあった。
ボブ・ディランは彼に憧れてフォーク・シンガーになり、彼の晩年には、彼が神経障害で入院していた精神病院に何度も面会に行き、彼と会話を交わし、彼の歌を歌って聴かせるなどしていたことが自伝にも書かれている。1967年に55歳でこの世を去った。
Pete Seeger – Turn, Turn, Turn
ピート・シーガーはニューヨーク出身で、プロテスト・ソングのパイオニアとして60年代のブームを牽引し、”アメリカン・フォークの父”とも呼ばれた。反戦運動や公民権運動にも積極的に関わった。
この曲はピート・シーガーによって50年代後半に書かれたが、ザ・バーズが1965年にカバーして、全米1位の大ヒットとなった。
The Brothers Four – Greenfields
米ワシントン州シアトルの出身だが、サンフランシスコで活動した4人組のグループ。彼らのような、どちらかというと行儀のよいフォーク・ソングは「カレッジ・フォーク」とも呼ばれてこの時期に流行したが、ボブ・ディランのようなやさぐれたフォークが人気を博すと、急速に人気を失ってしまった。
アメリカよりも日本でのほうが人気が高く、何度も来日している。この曲は全米2位の大ヒットとなった彼らの代表曲だ。
The Kingston Trio – Where have all the flowers gone?
この曲もピート・シーガーが1956年に発表した反戦歌だが、キングストン・トリオのカバーによって、世界的に知られるようになった。日本のフォーク・ブームの際にも、最も有名な反戦歌として日本語でも歌い継がれた。
The Highwaymen – Michael
ブラザーズ・フォアやキングストン・トリオと共にカレッジ・フォーク・ブームに乗って活躍したハイウェイメンの大ヒット曲。全米1位、全英1位となり、全米年間チャートでも3位となるほどの特大ヒットとなった。
原曲はサウスカロライナ州のセントヘレナ島で南北戦争中に作られたという、ゴスペルである。それをコネチカット州の学生だった5人組、ハイウェイメンが編曲し、デビュー・シングルとしてリリースした。
Joan Baez – Donna Donna
1930年代に東欧のユダヤ人によって彼らの言語であるイディッシュ語で書かれた歌。子牛が荷馬車に乗せられて売られていく様子を描いた歌だが、ユダヤ人がナチスによって強制収容所に連行されて行く様子の暗喩であると解され、反戦歌として広まった。実際にはナチスのユダヤ人のホロコーストはこの歌が作られたより少し後のことである。
われわれの世代なんかは、小学校のときに音楽の授業でこの歌を習ったりもしたが、あれは反戦歌として習ったのだろうか。
Dave Van Ronk – Green Rocky Road
フォーク・リヴァイヴァルの舞台として有名な、ニューヨークのグリニッチ・ヴィレッジのコーヒー・ハウス・シーンの中心的存在。ボブ・ディランが彼に憧れ、彼を見て自分に足りないものを知り、歌や演奏法を学び、彼の家に宿泊していたことなども、ディランの自伝に書かれている。
Bob Dylan – Blowin’ in the Wind
ボブ・ディランの2ndアルバム『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』に収録された、ディランの代表曲。この曲によってボブ・ディランの名前が世界的に知られるようになり、世界的なフォーク・ブームのシンボルとなった。
反戦歌として歌われることも多かったが、ディランによれば訳知り顔でああだこうだとわかったようなことを言う人々に「まだ答えは見つかってないんだ」と揶揄するような意味も込められていたという。
Peter, Paul and Mary – Blowing in the Wind
ボブ・ディランの『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』がリリースされたわずか3週間後にリリースされたこのカバーは、全米2位の大ヒットとなった。実はこの曲を有名にしたのはディランより先にこのP.P.M.だったのだ。それにしてもマリーさんの美しいこと!
Phil Ochs – Power And The Glory
プロテスト・シンガーとして時事的な歌や反戦・反体制的な歌を歌ったフィル・オクスの1964年のデビュー・アルバム『オール・ザ・ニュース・ザッツ・フィット・トゥ・シング』収録曲。
ウディ・ガスリーの「わが祖国」にも似た、美しい国土や素晴らしい国民への賛辞と、それを支配しようとする権力者を批判した、愛国的な歌だ。
以上、ロックの源流、60年代初頭のムーヴメント”フォーク・ミュージック・リヴァイヴァル”【必聴10組10曲】でした。
(Goro)