AC/DC
It’s a Long Way to the Top (If You Wanna Rock ‘n’ Roll) (1975)
オーストラリア出身のハード・ロック・バンド、AC/DCの、オーストラリアとニュージーランドのみで発売された2ndアルバム『T.N.T.』からのシングルだ。オーストラリアのシングル・チャートで9位まで上昇する、彼らにとってのブレイク曲となった。
このヒットをきっかけに、彼らの1stアルバムと2ndアルバムを編集した、全世界向けデビュー・アルバム『ハイ・ヴォルテージ』がリリースされた。この曲はそのオープニンク・ナンバーでもある。
いかにもAC/DCらしい、シンプルでキレのいいギター・リフに、豪快にバグパイプが絡むのが面白い。オーストラリアはスコットランドからの移民が多いせいで、バグパイプが盛んな国なのだそうだ。ヴォーカリストがバグパイプを肩に担いで歌うロック・バンドなんて他に見た事がないので面白い。
原題は「頂点への道は遠い (ロックンロールをしたいなら)」という意味で、ロック・バンドのツアーに降りかかる様々なトラブル、暴力沙汰や強盗、ドラッグの誘惑、強欲なエージェントなどを挙げ、それら長い苦難の道を乗り越えなければロックンロール・スターにはなれないんだ、と歌っている。
わたしは若い頃はハード・ロックをあまり聴いていなかったので、AC/DCもそれほどよく知らなかった。この曲も数年前に、偶然知って好きになった。AC/DCは最初からカッコ良かったのだなと思った。
若い頃はAC/DCなんて、もしかしてバカなんじゃないかと疑っていたし、あの半ズボンにランドセルのやつはさすがにダサいんじゃないかと思いこんでいたので、スタイリッシュなつもりのわたしは距離を置いていたのだ。それを今はとても恥じている。バカでダサいのは、わたしのほうだった。
イントロを聴いただけでもう、いてもたってもいられないほどバカになれるロックこそ、本物のロックなのだということは、今はもちろんわかっている。40年ロックを聴き続けてきた成果だ。
AC/DCの音楽性が昔からまったく変わらないことを批判する無粋な輩もいるらしいが、2017年に死去したメンバーのマルコム・ヤングは生前こう語っていた。
「これまでにバンドが作ったアルバムが全部同じように聴こえる」と言われたら、「そうだな。同じバンドだからさ」と答えるよ。
その通りだ。
変わらないバンドを批判するのはいつも、そのバンドのファンでもなんでもない、どうでもいい奴らだ。
長年のファンが「あいつらは変わっちまった」なんて嘆くのはよく聞くが、「あいつらはずっと変わらない」なんて、褒め言葉でしか聞くことはない。
AC/DCのファンたちも、AC/DCが永遠に同じでいてくれることを願っている。バンドはその期待にしっかり応えているだけだ。
(Goro)