ジミー・クリフ『ザ・ハーダー・ゼイ・カム』(1972)【最強ロック名盤500】#187

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【最強ロック名盤500】#187
Jimmy Cliff
“The Harder They Come” (1972)

1972年に公開されたジャマイカ映画『ザ・ハーダー・ゼイ・カム』は、ジャマイカで初めて製作・撮影された長編映画だった。映画館に押しかけたジャマイカ人の観客たちは、自分と同じ肌の色をした、自分たちと同じ訛りのジャマイカ英語を喋る人々がスクリーンに登場し、よく知るジャマイカの街が映し出されることに大いに驚き、熱狂したという。

本作はジミー・クリフ名義になっているが、映画のサウンドトラック盤として1972年7月にリリースされたものである。

映画の主人公である若者は、田舎から、都会のキングストンに出てきたものの金を騙し取られ、そこで仕事を探す羽目になる。

若者は自作の曲を売り込んでレコードを録音するが、報酬は正当に払われず、麻薬の運び屋となってやがて殺人にも手を染めてしまう。その間にレコードがヒットし、歌手として人気に火がつく一方で、警察に追われる身となっていく。

映画の主人公を演じたのはジミー・クリフ自身で、この映画のためにタイトル曲を書きおろした。サウンドトラックにはジミー・クリフが過去に発表した曲が3曲収録され、映画の監督・脚本を務めたペリー・ヘンゼルによって選曲されたお気に入りのレゲエ・ナンバーが6曲収録された。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 ユー・キャン・ゲット・イット(ジミー・クリフ)
2 ドロウ・ユア・ブレイクス(スコッティ)
3 バビロン川のほとりで(メロディアンズ)
4 遙かなる河(ジミー・クリフ)
5 スウィート・アンド・ダンディ(メイタルズ)
6 ザ・ハーダー・ゼイ・カム(ジミー・クリフ)

SIDE B

1 ジョニー・トゥ・バッド(スリッカーズ)
2 シャンティ・タウン(デズモンド・デッカー)
3 プレッシャー・ドロップ(メイタルズ)
4 シッティング・イン・リンボ(ジミー・クリフ)
5 ユー・キャン・ゲット・イット(別テイク)
6 ザ・ハーダー・ゼイ・カム(別テイク)

ジミー・クリフによる4曲はすべて名曲だが、特に彼の代表曲として知られる「ザ・ハーダー・ゼイ・カム」と、「遙なる河」は超名曲であり、レゲエ最初期のクラシック・ナンバーとしてレゲエ・ファンなら知らない者はいない。

また、ジミー・クリフ以外のアーティストたちによる楽曲も、レゲエを愛する監督のチョイスだけあって素晴らしい楽曲ばかりだ。

この【最強ロック名盤500】で映画のサウンドトラックを選んだのは初めてのことだし、レゲエ・アルバムも初めてのことだが、選んで当然の、最初から最後まで何度聴いても楽しめる名盤である。

本作はイギリスとアメリカで発売され、これによってレゲエという音楽が世界的に広く知られるようになった。

そして、この9ヶ月後にはボブ・マーリィ&ザ・ウェイラーズが『キャッチ・ア・ファイアー』でメジャー・デビューする。この時期がまさに、レゲエが中米のジャマイカから大陸間弾道ミサイルみたいに発射されて、世界中の都市の音楽好きの若者たちにドカンと衝撃を与えた瞬間だったのである。

ジャマイカというカリブ海に浮かぶ小国で生まれた音楽は、そのリアルな歌詞や強烈なサウンド、そしてレベル・ミュージック(抵抗の音楽)としての熱量で、当時の英米のロック・ミュージックから失われつつあった力強さを持っていた。

当時からジャマイカ人の移民が多く住んでいたイギリスでは特にその影響が顕著であり、やがてレゲエを身近に聴いて育った新しい世代のイギリス人アーティストが、続々とロックシーンに登場することになる。

↓ 映画用に撮影された「ザ・ハーダー・ゼイ・カム」のレコーディング風景。

↓ 1969年にシングル・リリースされたジミー・クリフの代表曲「遙なる河」。動画は1976年のパフォーマンス。

(Goro)

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