ニック・ドレイク『ファイヴ・リーヴス・レフト』(1969)【わたしが選ぶ!最強ロック名盤500】#137

Five Leaves Left -Hq- [12 inch Analog]

⭐️⭐️⭐️

【わたしが選ぶ!最強ロック名盤500】#137
Nick Drake
“Five Leaves Left” (1969)

ニック・ドレイクは、ビルマ(現ミャンマー)生まれのイギリス人のシンガー・ソングライターだ。本作は1969年9月に発表された彼の1stアルバムだ。

3枚のアルバムを発表したものの商業的成功は得られず、晩年はうつ病が悪化し、自殺か事故死かもわからない状況で、1974年11月25日に26歳でこの世を去った。

そんな悲劇的な経歴を持つ夭折の天才として知られているためどうしてもその楽曲も暗いイメージの先入観から逃れられないが、本作は決して華やかではないものの、暗いというよりは繊細で透明感溢れる、純粋で独創的な音楽である。

ジャンルで言えばフォークということになるだろうが、ボブ・ディランのような外界に向かって言葉を繰り出すフォークとはまったく真逆のものだ。ニックの言葉は常に内向きで、外に向かって何かを主張するようなところはまったく感じられない。90年代の若者たちに彼の音楽が再評価されたのは、そんな内向きの世界観が強い共感を得たからではないかと思っている。

録音にはフェアポート・コンヴェンションのリチャード・トンプソンやペンタングルのダニー・トンプソンといった英国フォークの中心人物も参加している。

個性的な歌声の存在感もさることながら、変則チューニングのアコースティック・ギターを中心に、ストリングスや木管楽器を効果的に使い、クラシックやジャズの要素なども導入したアレンジとの一体感が素晴らしい。録音時は、オーバー・ダビングを一切せず、ニックを他の奏者が半円形に囲む形で録音されたという。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 タイム・ハズ・トールド・ミー
2 リヴァー・マン
3 スリー・アワーズ
4 ウェイ・トゥ・ブルー
5 デイ・イズ・ダーン

SIDE B

1 チェロ・ソング
2 ソウツ・オブ・メリー・ジェーン
3 マン・イン・ア・シェッド
4 フルーツ・トゥリー
5 サタデイ・サン

少しもポップではないし、キャッチーなところなんて1ミリもないけれども、聴けば聴くほどに、その唯一無二の詩的な美しさにハマっていく。

決して古びない、小さな部屋で静かに永遠に奏でられる音楽のようだ。
その孤高の歌声は思慮に富み、温かく、ほのかに希望に輝いているように聴こえる。

↓ アルバムのオープニングを飾る「タイム・ハズ・トールド・ミー」。

Time Has Told Me

↓ 2004年にシングル・カットもされた代表曲のひとつ「リヴァー・マン」

Nick Drake – River Man (Video)

(Goro)