クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング/ヘルプレス 【’70s Rock Masterpiece】

【70年代ロックの名曲】
Crosby, Stills, Nash & Young
Helpless (1970)

バーズ、ホリーズ、バッファロー・スプリングフィールドという、60年代のロックシーンで活躍したバンドのメンバーだった3人が集まって結成されたのがクロスビー、スティルス&ナッシュというスーパー・グループだった。

彼らは美しいコーラスとアコースティックサウンドの1stアルバムで人気を博し、ウッドストックにも出演した。まさにヒッピー・カルチャー時代の象徴のような存在だった。

その後ニール・ヤング加わって4人となり、傑作2ndアルバム『デジャ・ヴ』が誕生する。
ヤングが加わったことによって緊張感が強まり、厳しさが増し、ロック感が高まり、楽曲も充実して個性の強い名曲揃いのアルバムとなった。1970年3月発表、まさに60年代の終焉と70年代の幕開けを象徴するようなアルバムである。

当時はちょうどビートルズが解散した直後だったので、ロックファンからは「70年代のビートルズ」と期待されたそうだが、メンバーの個性のぶつかり合いはどうやらビートルズなんて目じゃないぐらいだったらしく、わずか1年ほどで解散してしまう。

この曲はその傑作2ndアルバム『デジャ・ヴ』に収録されたニール・ヤングの曲だ。

初めて聴いたのはまだニール・ヤングなんて名前ぐらいしか知らない頃だった。
アルバム全体にテンション高めの曲が多い中で、なんだか止まりそうなぐらい遅いイントロが疲れきったように始まり、ニール・ヤングの宙にへろへろと漂うようなか細い歌声が衝撃的だった。曲はシンプルそのものであり、DとAとGのコードを繰り返しているだけなのに、1度聴いたら忘れられない美しさだ。

ニール・ヤングの自伝によれば、この曲のレコーディングでは、メンバーと演奏しながら歌を入れたそうだ。

力の抜けきったサウンドを求めたがなかなか理解されず、ドラマーが食い気味になったり、必要のないオカズやアクセントをあちこちに入れたり、ベースの音数が多すぎたりするので、あえて深夜まで何度も繰り返して演奏させて彼らを疲れさせ、余計なことをせずただゆっくりと演奏するようになるまで粘ってこのテイクを完成させたという。たしかにもう、全員死にそうな感じだ。

この曲は学生運動を描いた1970年の映画『いちご白書』でも使われた。
学内の闘争に明け暮れ、学部長室や講堂を占拠した学生たちの、しかし夜になると床の上でそれぞれが毛布にくるまってあどけない子供のような寝顔で眠りこけている映像にのせて、この曲が流れる。凄く印象的なシーンだった。

(Goro)