炎上バンドの最高のプロローグ 〜マニック・ストリート・プリーチャーズ『ジェネレーション・テロリスト』(1992)【最強ロック名盤500】#34

Generation Terrorists (Legacy Edition) (Remastered)

⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#34
Manic Street Preachers
“Generation Terrorists” (1992)

マニック・ストリート・プリーチャーズはそのデビュー当時、「1stアルバムで全世界で1位を獲って解散する」などと宣言してそのビッグマウスが話題になったり、彼らのその破天荒な言動に賛否両論があったり、結局1位を獲れなくてものすごい長文の解散撤回宣言を発表したりと話題に事欠かず、当時の音楽誌をにぎやかに飾ったものだった。今で言う、炎上商法の先駆けと言えるのかもしれない。

でも当時のわたしはそういう悪ぶりっこみたいなノリが嫌いだった。
『ジェネレーション・テロリスト』なんていう大仰なタイトルも含めて、アホらしいなあと思って興味を示さなかったのだけど、シングルカットされた「享楽都市の孤独」というセンチメンタルな曲を少し後になって偶然耳にして、なんだ可愛いとこあるじゃないか、本当はテロリストじゃないんだな、なんてそのギャップに少し好感を覚えたものだった。あ。もしかしてこれも、今で言うギャップ商法だったのかな。

アルバムは、パンク・ロックとハード・ロックとグラム・ロックが混在したような、テンション高く勢いのある好アルバムだ。「リトル・ベイビー・ナッシング」のような意外にもポップな一面を見せた愛すべき曲もある。日本盤にはボーナス・トラックとして3枚目のシングル「モータウン・ジャンク」が収録されているのが嬉しい。

フロントマンのジェームス=ディーン・ブラッドフィールドが曲を書き、歌い、リードギターを弾くという孤軍奮闘バンドだけれども、破天荒なバンドのイメージと裏腹に、いちばん地味な見た目の彼には、真面目で音楽の才能があったのだ。

本作は1992年2月にリリースされた。18曲73分という、アナログ盤2枚組分の大容量は宣言通りだが、全英アルバムチャート13位と、健闘はしたものの残念ながら1位にはなれなかった。それ以外では、日本でオリコン60位、オーストラリアで182位という結果で、アメリカではかすりもしなかった。

しかし今になって思えば、このとことんカッコ悪いスタートこそ、彼らの奇跡のサクセスストーリーにとって最高のプロローグとなったのだ。

その後、彼らの破天荒なイメージを最も体現したギタリストのリッチーが失踪してそのまま消息を断つという最悪の事態も乗り越え、3人だけになって見た目が一気に地味になったものの音楽的には成長を重ね、アルバムを出すたびに評価がうなぎ上りとなり、やがてイギリスを代表する国民的ロックバンドの地位にまで登り詰めた。

最初は悪目立ちして色々あったけれども、今となっては、90年代のイギリスのバンドで最も成功したバンドのひとつとして、現在も高い人気を維持している。

↓ 全英17位となった、初期の代表曲「享楽都市の孤独」。当時の少年少女たちの胸を熱くさせた、感傷的で青春的でステキな曲である。MVは来日中に東京や横浜などで撮影されている。

Manic Street Preachers – Motorcycle Emptiness

↓ 米国のポルノ女優トレイシー・ローズをゲスト・ヴォーカルに迎えた、女性の性的搾取について歌われている曲。MVにはトレイシー・ローズは出演していない。デビュー前のシャンプーの2人が出演している。

Manic Street Preachers – Little Baby Nothing

(Goro)