恐るべき子供たちの登場 〜ザ・フー『マイ・ジェネレーション』(1965)【最強ロック名盤500】#98

My Generation [12 inch Analog]

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#98
The Who
“My Generation” (1965)

ビートルズは1stアルバムのジャケットで、EMI本社の階上からニッコリと笑顔でカメラを見下ろした。

そしてその真逆のように、ドラム缶横の薄汚れた場所から険しい表情でカメラを見上げるザ・フー。1965年12月に英国でリリースされた1stアルバム『マイ・ジェネレーション』のジャケット写真だ。彼らの登場は革命的だった。

ビートルズが愛だの恋だのを歌うモテ系陽キャ男子たちの代弁者なら、ザ・フーは孤独と疎外感とフラストレーションで今にも暴発しそうな非モテ系陰キャ男子の代弁者だった。

ザ・フーは、大人たちの古い価値観に抵抗し、若い世代のナマの声を、暴力的な荒っぽい演奏と、耳をつんざくフィードバックノイズ、フレッシュなメロディに瑞々しいコーラス、そして若者らしい遊び心とユーモアで表現した。

その意味で本作は、英国パンクの源流と言えるだろう。

本作はオリジナル曲が9曲、カバーが3曲という構成になっている。プロデューサーはキンクスの1stのプロデュースも務めたシェル・タルミーだ。カッコ内はカバー元のアーティスト。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 アウト・イン・ザ・ストリート
2 アイ・ドント・マインド(ジェームス・ブラウン)
3 ザ・グッズ・ゴーン
4 ラ・ラ・ラ・ライズ
5 マッチ・トゥー・マッチ
6 マイ・ジェネレイション

SIDE B

1 キッズ・アー・オールライト
2 プリーズ・プリーズ・プリーズ(ジェームス・ブラウン)
3 イッツ・ノット・トゥルー
4 アイム・ア・マン(ボ・ディドリー)
5 ア・リーガル・マター
6 ジ・オックス

全英2位の大ヒットとなったA6「マイ・ジェネレーション」は、ザ・フーの代表曲であり、この曲こそが史上初のパンクロック・アンセムと言える。

大人たちや社会への不満を、吃音でうまく言えないけれども、それでも必死で叫ぶ。

ザ・フーの描く若者はいつもそうだけど、ヒーローのような代弁者ではなく、コミュ障みたいな、既存の社会の一員になることに抵抗を感じている、いつの時代にもいる悩める若者なのだ。

B1「キッズ・アー・オールライト」も、A6に勝るとも劣らない名曲だ。
孤独や不安を吹き飛ばすような、確信に満ちた肯定感、明るい輝きと美しさに満ちている。大好きな曲だ。

他にも、A1「アウト・イン・ザ・ストリート」やA5「ラ・ラ・ラ・ライズ」、A5「マッチ・トゥ・マッチ」、B11「リーガル・マター」といったオリジナル曲はどれも、心躍るような若者らしい瑞々しさにあふれている。

最後を締めくくるインストのB6「ジ・オックス」は、ロック史上初めて、フィードバック・ノイズを録音した楽曲と言われている。白煙でも上がりそうぐらいのヘヴィなサウンドは、その後のロックを予言するようでもある。

そんな新鮮なオリジナル曲に比べると、途中に挿入された3曲のR&Bのカバーは、悪い演奏ではないものの、カバーを収録すること自体がすでに時代遅れにすら感じられるほどだ。

そしてまた、「愛だの恋だの」を能天気に歌っていられる時代も終わった。

1965年の終わりとともに、カバーの時代は終わり、愛だの恋だのの時代も終わり、ロックは自分の言葉で、よりリアリティのある歌を歌う時代へと、ステージが移行したのだった。

ザ・フーのオリジナル曲を書いたバンドのギタリスト、ピート・タウンゼントはこの当時たったの20歳だった。

大人たちはさぞかしビビったことだろう。

まさに「恐るべき子供たち」の登場だった。

↓ 全英2位の大ヒットとなったザ・フーの代表曲であり、永遠のロック・アンセム「マイ・ジェネレーション」

The Who – My Generation – LIVE (1967)

↓ ザ・フーの瑞々しい音楽性を象徴するもうひとつの代表曲「キッズ・アー・オールライト」。

The Who – The Kids Are Alright

(Goro)

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