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Ray Charles
“Ray Charles” (1957)
米ジョージア州出身の盲目の天才、レイ・チャールズは、ブルースなどを演奏するトリオ編成のバンドで1949年にレコードデビューし、いくつかのヒット曲も放った後、1953年にあらためてアトランティックからソロとしてメジャーデビューした。
3枚目のシングル「メス・アラウンド」が米R&Bチャートの3位となるヒットでブレイクし、以降R&Bチャートのトップテンにヒット曲を10曲以上連続で送り込み、満を持して1957年6月にリリースされたのが、この1stアルバムだ。
内容は、それまでのヒット曲を集めたベスト盤的な構成となっている。
順位はすべて米R&Bチャートの順位だ。
SIDE A
1 エイント・ザット・ラヴ (9位)
2 こぼれる涙 (1位)
3 カム・バック・ベイビー (4位)
4 シナーズ・プレイヤー
5 ファニー
6 ルージング・ハンド
7 ア・フール・フォー・ユー (1位)
SIDE B
1 ハレルヤ・アイ・ラヴ・ハー・ソー (5位)
2 メス・アラウンド (3位)
3 ジス・リトル・ガール・オブ・マイン (9位)
4 メリー・アン (1位)
5 グリーンバックス (5位)
6 ドント・ユー・ノウ (10位)
7 アイ・ガット・ア・ウーマン (1位)
激しい曲も、スローなバラードも、地味な曲も、ブルースも、ジャズ風のも、カントリー風のも、その引き出しの多さだけでなく、それらがすべてがヒットしているということに驚かされる。当時のレイ・チャールズの音楽の新鮮さと幅広さ、そして人種を超えてリスナーの心に刺さる歌の力によるものだろう。
レイ・チャールズは、ブルースとジャズとR&Bとゴスペルの要素をまとめ、感情をむき出しにした音楽「ソウル・ミュージック」を創造した天才であり、さらにカントリー・ミュージックもレパートリーに加えて、真にボーダーレスなポップ・ミュージックの第一人者となった巨人である。その意味でビリー・ジョエルが「私はレイ・チャールズはエルヴィス・プレスリーよりも重要だったと考えている」と語った真意も理解できる。
B1「ハレルヤ・アイ・ラヴ・ハー・ソー」はレイ・チャールズの中でも最も好きな曲のひとつだ。
B2は1953年のブレイク作「メス・アラウンド」。スピード感のあるブギウギだが、この曲もまたロックンロール爆誕前夜に生まれたその原型のひとつと言えるだろう。彼もまた、ロックンロール創世記の神話の神々のひとりに数えるべきなのだ。
B7「アイ・ガット・ア・ウーマン」も多くのアーティストがカバーした代表曲。エルヴィスも1stアルバムでカバーしている。
彼の音楽伝記映画『レイ/Ray』では、アマチュア時代に様々なクラブに出演しながら、その店の客層やニーズに合わせて、ゴスペルやブルース、ジャズやカントリーなど、様々なジャンルの音楽を演奏する場面があった。 それが彼の音楽の引き出しを豊かなものとし、やがてそれらを融合した独創的な名曲の数々を生んだのだろう。
また、わたしは彼の声が大好きだ。
彼の声とその表現力は、やんちゃでユーモラスなときもあれば、シリアスでクールなときもあり、そして悟りきった賢人のような深みを見せることもある。ときには溌剌とした若者のようだったり、ときには優しい父親のようでもあり、そしてときには孤独な老人のようにも彼は歌う。
どんな単純なメロディでも、彼が歌えば一気に名曲の深みが生まれるのだ。稀有のヴォーカリストと言えるだろう。
↓ アトランティックから3枚目のシングルで、R&Bチャート3位のヒットとなったブレイク作「メス・アラウンド」。それまでの「ナット・キング・コールの物真似」とも評された自身の殻を打ち破った快作だ。
↓ ゴスペルの要素もジャズの要素もカントリーの要素もあるR&Bで、R&Bチャート5位となった清々しい気持ちにさせてくれるヒット曲「ハレルヤ・アイ・ラヴ・ハー・ソー」。わたしの最も好きな曲のひとつだ。
(Goro)