
【90年代ロックの快楽】
Nick Cave & The Bad Seeds
Straight To You (1992)
Nick Cave & The Bad Seeds
Straight To You (1992)
ニック・ケイヴはオーストラリアで80年代から「バースデイ・パーティー」というグループのヴォーカルとして活動していた。異様なリズムに呪文のような歌と咆哮、裸の上半身に「HELL」などとたむらけんじみたいに書いて、暗黒舞踏みたいに飛び跳ねていたものだ。
そのバースデイ・パーティーを解散した後、ソロで再デビューし、ヘロイン中毒から立ち直って歌い始めたのがこの、まるでキャバレーソングのようにわかりやすく、しかも文字通りストレートで力強い歌である。
若い頃から悪の限りを尽くして地獄を見た若者が、ついに更生を誓って真人間になるために社会へと一歩足を踏み出した、そんな感慨がわいてくるような曲だ。
ロック界にはほんとうに少ない、このパンチの効いた低音ヴォーカルがわたしは大好きだ。
(Goro)