グランド・ファンク・レイルロード『グランド・ファンク』(1969)【わたしが選ぶ!最強ロック名盤500】#147

グランド・ファンク

⭐️⭐️⭐️

【わたしが選ぶ!最強ロック名盤500】#147
Grand Funk Railroad

“Grand Funk” (1969)

暑い日にはヘンデルの『水上の音楽』などを聴いたりすると涼しげで良いものだが、そこをあえて暑い日に熱いロックを聴いてさらにアツくなる、というのもまたオツなものだ。

本作はアメリカン・ハード・ロックの先駆者であり、すべてのヘヴィ・ロックの祖とも言える、グランド・ファンク・レイルロードが1969年12月にリリースした2ndアルバムである。唐辛子のような真っ赤なジャケットがいかにも熱そうだ。

若い頃はハード・ロックが嫌いだったわたしは、このグランド・ファンクも実のところまったくピンと来なかった。うるさいだけで中身が空っぽのバンドだと思った。しかし最近はわたしも食わず嫌いを次々と克服して、ハード・ロックも楽しめるようになってきているので、家族が出かけた隙に爆音で聴いてやる。

グランド・ファンクなんて小さい音で聴いても1ミリも面白くない。やっぱり爆音じゃないと。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 ゴット・ディス・シング・オン・ザ・ムーヴ
2 プリーズ・ドント・ウォーリー
3 ハイ・ファルーティン・ウーマン
4 ミスター・リムジン・ドライバー
5 イン・ニード

SIDE B

1 ウインター・アンド・マイ・ソウル
2 パラノイド
3 孤独の叫び

B3「孤独の叫び」のみアニマルズのカバーで、他はすべてヴォーカル&ギターのマーク・ファーナーの作だ。

腹にズドンズドンと響くベースが音像の中心にいて、全身をバシバシと引っぱたいてくるドラムがやや左側、耳を通って脳天に突き刺さるギターが右側と、どの楽器も同じぐらいの音量でわたしの身体に打撃を与えてくる。

甘さも優しさもない、鈍器を振り回すバカのようなゴリッゴリのアブないサウンドが強烈だ。肉体に直接響き、肉体労働の疲労が蓄積した筋肉がほぐれていく気さえする。爽快だ。

楽曲はシンプルそのもの。独創的なものでもないし、とり立てて新しいものでもない。
若い頃に聴いたときはそのシンプルさゆえに、頭でしか音楽を聴こうとしていなかったわたしには逆に理解できなかったのだろう。頭じゃわからないロック、というものもあるのだ。

なにしろ彼らは米ミシガン州のフリントの出身だ。ゼネラルモーターズ創業の地である。
自動車工場の過酷な労働で肉体を鍛え上げ、工場の騒音で耳を鍛え上げたに違いない人々のDNAを受け継いだ彼らの音楽は、同じく肉体労働で鍛えられつつある現在のわたしの耳と肉体には馴染みやすくなっているに違いない。頭よりも肉体で味わうロックだ。マッスル・ロックである。

アルバムは全米11位の大ヒットとなった。

↓ アルバムのオープニングを飾る「ゴット・ディス・シング・オン・ザ・ムーヴ」。

Got This Thing On The Move (Remastered)

↓ アニマルズのカバーで、後にライヴの定番となった人気曲「孤独の叫び」。

Inside Looking Out (Remastered)

(Goro)