初期のザ・ローリング・ストーンズは、米国のブルース・R&Bのカバーを中心としていたが、70年代に入るとオリジナル曲の充実もあって、カバーの割合は減少していった。
しかし近年になってリリースされた、往年の名盤のデラックス・エディションなどに収録された数々の未発表トラックにはカバー曲も多く含まれており、お蔵入りにはなっていたものの、カバー曲の録音も続けていたことがわかる。
第5回目となる今回は、1974年から80年頃にかけてストーンズがカバーした、その原曲を発掘してみた。
エイント・トゥー・プラウド・トゥ・ベッグ(1966)
The Temptations – Ain’t Too Proud to Beg
テンプテーションズ(1960- )の1966年のアルバム『Gettin’ Ready』からの第2弾シングルとしてリリースされた曲。全米13位、イギリスでは彼らにとって初のヒットとなり、全英21位まで上昇した。リード・ヴォーカルはバリトンのデヴィッド・ラフィン。
ストーンズ版は『イッツ・オンリー・ロックンロール』に収録。
チェリー・オー・ベイビー(1971)
Eric Donaldson – Cherry Oh Baby
ジャマイカのシンガー・ソングライター、エリック・ドナルドソン(1947- )のこの曲は、1971年に行われたジャマイカ独立祭の〈ポピュラー・ソング・コンペティション〉で優勝し、覚えやすいメロディと親しみやすい曲調で永く愛された。
1971年は、ボブ・マーリィがメジャー・デビューする前年であり、映画『ハーダー・ゼイ・カム』が公開される前年である。本格的なレゲエ・ブームが世界的に巻き起こる直前の、アーリー・レゲエ・ミュージックの大名曲だ。
ストーンズ版は『ブラック・アンド・ブルー』に収録。
マニッシュ・ボーイ(1955)
Muddy Waters – Mannish Boy
シカゴ・ブルースの王様であり、ストーンズの大師匠でもあるマディ・ウォーターズ(1913-83)の代表曲。
オレは「BOY」じゃない、「MAN」だ!と叫ぶ、アケスケでビンビンな、ホレボレするぐらいカッコいい、ホンモノの男の歌だ。
ストーンズ版は『ラヴ・ユー・ライヴ』に収録。
ウォリード・ライフ・ブルース(1941)
Big Maceo – Worried Life Blues
ジョージア州出身でシカゴに移り住んで活動したビッグ・メイシオ(1905-53)の代表曲。史上最も多くのカバーを生んだと言われるブルースのスタンダードだ。
ストーンズ版は『エル・モカンボ 1977』に収録。
ジャスト・マイ・イマジネーション(1971)
The Temptations – Just My Imagination
夢見るような浮遊感のあるサウンドが特徴の、片思いの心情を歌ったせつなくも美しいバラードだ。全米1位、全英8位の大ヒットとなった。
ストーンズ版は『女たち』に収録。オリジナルとはまったく違うロック・アレンジで、見事に生まれ変わらせた。
ウィー・ハド・イット・オール(1973)
Waylon Jennings – We Had It All
アウトロー・カントリーの代表格として知られるウェイロン・ジェニングス(1937-2002)が1973年にリリースしたアルバム『ホンキー・トンク・ヒーローズ』からのシングル。多くのアーティストにカバーされた名曲だ。
ストーンズ版は2011年にリリースされた『女たち〈デラックス・エディション〉』のアウトテイク集に収録されている。キースがヴォーカルを取っている。 シビれる。
タラハシー・ラシー(1959)
Freddy Cannon – Tallahassee Lassie
マサチューセッツ州出身のフレディ・キャノン(1940- )は50年代のロックンロール黄金期に活躍した、エネルギッシュでたたみかけるようなビートを得意としたロックンローラーだ、この曲は全米6位と大ヒットした、彼の代表曲。
ストーンズ版は『女たち〈デラックス・エディション〉』に収録されている。
ユー・ウィン・アゲイン(1952)
Hank Williams – You win again
カントリー界のスーパー・レジェンド、ハンク・ウィリアムス(1923-53)が1952年にリリースしたシングル「セッティング・ザ・ウッズ・オン・ファイア」のB面に収録された曲。妻への絶望を歌った哀しい曲だ。カントリーチャートで10位のヒットとなり、その後多くのカバーが生まれた。
ストーンズ版は『女たち〈デラックス・エディション〉』に収録されている。
トラブルズ・ア・カミン(1970)
The Chi-Lites – Troubles a’ Comin’
シカゴ出身のシャイ・ライツ(1959- )の音楽スタイルは、主にフィラデルフィアで人気を博したヴォーカル中心の甘いソウル・ミュージックだったが、この曲はファンキーなカッティングから始まるシカゴソウルだ。
ストーンズ版は『刺青の男〈40周年記念エディション・デラックス版〉』のDisc2〈ロスト&ファウンド:レアリティーズ〉に収録された。
シェイム・シェイム・シェイム(1963)
Jimmy Reed – Shame, Shame, Shame
ミシシッピ州出身のブルースマンで、ポップな曲調や独特のハーモニカ奏法などで個性を放ち、人気を博したジミー・リード(1925-76)の代表曲。
この曲もエアロスミスやジミヘン、ジョニー・ウインターやサーチャーズなど、多くのアーティストがカバーしているが、わたしが聴いた中ではストーンズ版が圧倒的に良い出来だ。なのにお蔵入りとは、もったいないというかなんというか。
ストーンズ版は『刺青の男〈40周年記念エディション・デラックス版〉』に収録された。
明日なきさすらい(1973)
Dobie Gray – Drift Away
テキサス出身のブルース歌手、ドビー・グレイ(1940-2011)の代表曲で、全米5位の大ヒットとなった。「ビートをくれ、俺の魂を自由にしてくれ、ロックンロールの海をさすらうのさ」と歌う、ロックンロール讃歌だ。
ストーンズ版は『刺青の男〈40周年記念エディション・デラックス版〉』に収録された。
以上、11曲でした。
ストーンズ版の方が気になる方はYouTubeで検索してみてください。ほぼすべて公式にアップされているはずです。
次回、vol.6もご期待ください。
(Goro)