当時流行のインド風サイケ味で大ヒットした画期的なシングル【ストーンズの60年を聴き倒す】#19

Paint It Black - Wikipedia

A) 黒くぬれ!

B) ロング・ロング・ホワイル

A) Paint It Black
B) Long, Long While
The Rolling Stones Single 1966

英国10枚目のシングル「黒くぬれ!」は、アルバム『アフターマス』から1ヶ月後にリリースされ、全英1位、全米1位の大ヒットとなった。60年代のストーンズのヒット曲の中でも「サティスファクション」と並んで世界的に広く知られた、人気の高い代表曲である。

インド風なのか中近東風なのかよくわからないけれどもエキゾチックな曲調と謎めいた歌詞、インドの楽器シタールが使われているのが大きな特徴だ。

なんで急にインド? と思うかもしれないが、当時はLSD体験やヒッピー思想からの延長で、超越瞑想だの神秘主義だの、インドの哲学者や霊的指導者にカブれるのがミュージシャンたちの間で流行ったのである。

「だの」なんて言い方は失礼だけれども、われわれ日本人は瞑想とか神秘主義とか言われるとどうしても胡散臭い宗教団体を思い浮かべてしまうのでいけない。

特にインド人導師のマハリシを崇拝し、シタール奏者のラヴィ・シャンカールに弾き方を習いにインドまで行ったジョージ・ハリスンがその筆頭だが、その後ビートルズはあらためて全員でインドまで瞑想をしに行ったし、ミック・ジャガーもマハリシに面会している。ピート・タウンゼントは霊的指導者メヘル・ババを崇拝していた。

この曲にはインド哲学はまったく関係ないが、しかしそんな流行を巧みに取り入れて、インド風サイケ味をたっぷり盛りながらキャッチーなロックに仕上げたのはたいしたものだ。これまでの曲とは一味も二味も違っていながら、ちゃんとストーンズらしさもあり、バンドとして一気に進化した感じだ。

シタールを弾いているのはブライアン・ジョーンズだ。彼はどんな楽器でもあっという間にマスターする天才として知られているが、このときはジョージ・ハリスンに弾き方を教わると、ものの数分で弾けるようになったという。

Rolling Stones – Paint It Black LIVE (1966)

この曲もジャガー/リチャーズの作ということになっているが、きっかけはビル・ワイマンがハモンドオルガンを弾いているとチャーリーがそのリズムに乗り、ブライアンがシタールでメロディを弾き始めたのが発端だということをビルがその自著で書いている。

時代を象徴するような画期的なヒット曲となり、ファンにも人気の高い曲だったが、ブライアン脱退後はライヴで演奏されることは20年以上なく、90年代になってようやく再びライヴでも演奏されるようになった。

B面の「ロング・ロング・ホワイル」はオーティス・レディング風にも聴こえるバラード・ソングで、もちろんジャガー/リチャーズのオリジナルだ。沢田研二が在籍したザ・タイガースがこの曲をカバーしている。

Long Long While (Mono)

ストーンズが60年代にリリースしたシングルはこの『シングル・コレクション:ザ・ロンドン・イヤーズ』で、年代順にA面・B面ともすべて聴くことができる。ストーンズ・ファン必携のアルバムだ。

シングル・コレクション(ザ・ロンドン・イヤーズ)(SHM-CD)
(Goro)