1971
60年代という時代は、戦後世代の若者たちが中心となって、新しい価値観が認められる、より自由で平和な世界に変えていこうと、理想に燃えた革命の時代だった。
反戦運動や学生運動、公民権運動、ヒッピーという社会からドロップアウトした新しい生き方など、既存の体制や価値観に異議を唱え、新しい文化を生み出そうとする、彼らの外に向けたエネルギーに、ロックという新しい音楽が同期した。
その試みは、一部は成功し、一部は挫折に終わった。
新しい文化や「愛と自由と平和」の理想は世界中に浸透したが、戦争は終わらなかったし、ヒッピーはカルト化したり、社会と隔絶したりした。
ロックは世界中の若者を熱狂させ、急速に進化し、最も注目される新しい芸術のジャンルとなったが、ドラッグが蔓延し、才能豊かなロック・ヒーローたちを次々と蝕み、命を奪った。この年もまた、ドアーズのジム・モリソンというロック史に大きな影響を及ぼした才能を失っている。
70年代に入ると、シンガー・ソングライターが台頭し、中でもキャロル・キングの『つづれおり』は記録的なヒットとなった。
彼らの内省的で、個人的な音楽が支持されたのは、60年代には外に向けていた視線が、その夢と狂騒の終わりの反動によって、内へと向けられるようになったからなのかもしれない。
イギリスではハード・ロックとプログレッシヴ・ロックが更なる進化と膨張を続け、ローリング・ストーンズは黄金期を迎えていた。
以下はそんな1971年を象徴する名曲10選です。
Janis Joplin – Move Over
前年にジャニスがこの世を去ったときに製作途中だったアルバム『パール』は彼女の死の3か月後に発売され、9週連続全米1位という大ヒットとなった。
この曲はジャニスの作詞・作曲で、アルバムのオープニングを飾る、彼女の代表曲だ。わたしは18歳の頃初めてこのレコードを聴いた。レコードに針を落として30秒後にはもう彼女のファンになっていた。
Carole King – It’s Too Late
60年代にキャロル・キングは若き天才ソングライターとして他人に曲を提供して大ヒットを連発したが、70年代に入ると、シンガー・ソングライターとして活動する。
この年、歴史的名盤『つづれおり』を発表し、なんと15週連続で全米1位というメガ・ヒットとなり、キャロル・キングは女性シンガー・ソングライターの象徴的存在となった。
この曲はアルバムからのシングルで、これも5週連続で全米1位となった。
James Taylor – You’ve Got a Friend
キャロル・キングのカバーで、原曲は『つづれおり』に収録されている。この心を揺さぶる名曲は多くのアーティストがカバーしているが、最も有名なのがこのジェームス・テイラーのカバーで、全米1位、全英4位と彼にとって最大のヒットとなった。
Don McLean – American Pie
ロックンロールが誕生した1950年代後半から1970年までのロック激動期の時代について歌った歌で、8分を超える長尺の曲ながら、4週連続で全米1位の大ヒットとなった。
50年代の「音楽を聴いて幸せになれた時代」からずいぶんロックンロールは変わってしまった、昔のアメリカらしさは失われてしまった、という歌詞だ。
1959年2月3日、バディ・ホリー、リッチー・ヴァレンス、ビッグ・ボッパーという当時人気絶頂の若き3人のロックンロール・スターが飛行機事故で帰らぬ人となった日のことを「音楽が死んだ日(The Day the Music Died)」と歌ったことでも有名だ。
Marvin Gaye – What’s Going On
史上最高のソウル・アルバムと評されることもあるマーヴィン・ゲイの代表作『ホワッツ・ゴーイン・オン』のタイトル曲。
混迷を深める社会状況に対して「いったい何をしてる? 何が起こってるんだ?」と、疑問を投げかけるシリアスな歌詞に、柔らかく包み込むような空間的な広がりのある画期的なサウンドで、〈ニュー・ソウル〉の象徴的な名曲となった。
Rod Stewart – Maggie May
ソロ3作目となった『エヴリィ・ピクチャー・テルズ・ア・ストーリー』からのシングルで、ロッドの大ブレイク作となった、全英1位、全米1位の大ヒット曲。ロッドとマーティン・クイッテントンによる共作だ。
最初はシングルのB面に収録されたこの曲をラジオのDJたちが気に入ってかけまくったことで火が点いたという。マンドリンなどの素朴な音色のアコースティック楽器とロッドの心に沁みる嗄れ声がよく似合う。
John Lennon – Jealous Guy
ジョン・レノンのソロとしての2枚目のアルバム『イマジン』に収録された曲。「僕の嫉妬深さで、君を困らせてごめんよ」と歌う、自分の弱さを正直に曝け出したようなリアルな歌だ。メロディも一度聴いたら忘れられないし、アレンジも美しい。ジョン・レノンのソロではわたしはこの曲がいちばん好きだ。
The Rolling Stones – Brown Sugar
70年代はストーンズの黄金時代だった。その幕開けとなったアルバム『スティッキー・フィンガーズ』のオープニングを飾り、全米1位、全英2位の大ヒットとなった代表曲だ。
キース・リチャーズの大発明と言われる「リズムリフ」、陽気な悪魔のチョップ攻撃みたいなイントロが、ストーンズ最強時代の到来を告げる祝砲となった。
Yes – Roundabout
キング・クリムゾン、ピンク・フロイドと並んでよく知られた英国プログレ御三家の一組、イエスの4作目『こわれもの(Fragile)』の冒頭を飾る曲。シングル・カットもされて全米13位という、彼らにとって初のヒット曲となった。8分半ほどあるが、スピード感があるのと、飽きさせない展開と迫力、歌メロも印象的で一気に聴ける。
Led Zeppelin – Stairway To Heaven
4枚目のアルバムに収録された、レッド・ツェッペリンの数ある名曲の中でも、最も有名な曲だ。美しいアコギとリコーダー、印象的な歌メロで静かに始まり、様々な楽器が順に加わって徐々に盛り上がると、ギター・ソロが炸裂して、ハーイトーン・ヴォーカルで絶頂に達する。ハード・ロックのカッコいいところやドラマチックなところを1曲ですべて堪能できる、豪華会席料理のような、ロック入門にも最適な古典的名曲だ。
選んだ10曲がぶっ続けで聴けるYouTubeのプレイリストを作成しましたので、ご利用ください。
♪YouTubeプレイリスト⇒ ヒストリー・オブ・ロック 1971【シンガー・ソングライターの台頭】Greatest 10 Songs
ぜひお楽しみください。
(by goro)