Mick Ronson ft. David Bowie – Like a Rolling Stone
ボブ・ディランの最高傑作「ライク・ア・ローリング・ストーン」ももちろん多くのアーティストがカバーしているが、これはさすがに原曲超えというのはなかなか見当たらない。
そもそも原曲が弾き語りスタイルの曲でもなく、独特でありながら最高のサウンドに出来上がっているので、少なくともあのハモンド・オルガンが入っていないと物足りないし、しかし入れてしまうともう原曲とあまり変わらない印象になり、ただの廉価版か劣化版で終わってしまう。だから賢いバーズは、この曲には手を付けていない。
そのうえ歌詞は、かつて金持ちだった女性が人生を転落していくことを嘲笑するような内容なので、ちょっと性格が悪そうなヴォーカリストじゃないと雰囲気が出ないし、やはりディランのあの根性のねじ曲がってそうなヴォーカルはなかなか超えられないものだ。
その点、ザ・ローリング・ストーンズが1995年にリリースした『ストリップド』に収録したカバーは、まったくの正攻法アレンジのなかでは上出来のほうだったと思う。ミック・ジャガーも根性が悪そうなイメージの人だし(※個人の感想です)、しかもライヴ録音にしてはすごくちゃんと歌っていて、上手い。
そんなわけで、正攻法ならまだしも、大幅にアレンジしようとすると大抵は玉砕する名曲だが、ここで取り上げたミック・ロンソンとデヴィッド・ボウイによるカバーは、元がわからなくなるほど大幅にアレンジしながらも、なかなか秀逸な出来だ。
ミック・ロンソンなんて知らない人もいるかもしれないが、デヴィッド・ボウイがジギー・スターダストをやってた頃に、彼の横でギターを弾いていたギタリストである。
ミック・ロンソンは肝臓癌に侵され、1993年に46歳という若さで世を去った。そして彼が遺していた音源を集めて翌94年にリリースされたのが『ヘヴン・アンド・ハル(Heaven And Hull)』というアルバムで、この「ライク・ア・ローリング・ストーン」も収録されている。ヴォーカルが盟友デヴィッド・ボウイ、ギターはもちろんミック・ロンソンだ。
これはそもそも1988年に録音されていた音源らしいが、メタリックな輝かしい質感で縦横無尽に暴れ回るギターと、疾走感あふれるパワフルなヴォーカルがめちゃくちゃカッコいい。
この曲のカバーとしては、原曲超えというのではないけれど、まったく別のアプローチで成功しているほとんど唯一の例だと思う。
↓ ザ・ローリング・ストーンズのバージョン。
↓ ボブ・ディランのオリジナル。
(Goro)