ミート・パペッツ/アップ・オン・ザ・サン(1985)

Up On The Sun

【80年代ロックの快楽】
Meat Puppets – Up On The Sun

米アリゾナ州出身のミート・パペッツは最初、ハード・コアバンドとしてデビューした。
しかしすぐにそのスピードに飽きてしまい、2ndではスピードを落とした、パンクとサイケとカントリーのごた混ぜの暗黒のような名盤を産み落とした。それが昨日紹介した「レイク・オブ・ファイア」が入っている『ミート・パペッツⅡ』だ。

そして翌年の3rdアルバム『アップ・オン・ザ・サン』ではまた作風を一変し、ノイジーなギターも絶叫ヴォーカルもなくなり、かわりにカントリー色が強くなり、全編クリアな音のギターを中心とした、まるで野外全裸バーベキュー大会のような「明るく牧歌的な変態」といった雰囲気のアルバムとなった。
2ndとはまったく方向性も雰囲気も異なるが、ちゃんと芯にはミート・パペッツの変態性が体育座りしている。多様な音楽性を持つミート・パペッツの陰と陽、それぞれの名盤だ。

このタイトル曲は、まるで記憶喪失の男が断片的に思い出せることを挙げているような歌メロに、謎の部族の踊りのような独創的なギターリフが絡み合うド変態曲だ。

Up On The Sun

柳ジョージ/『祭りばやしが聞こえる』のテーマ(1977)

Time in Changes [Analog]

【ニッポンの名曲】
作詞:東海林良 作編曲:大野克夫

1stアルバム『Time in Changes』収録曲で、萩原健一主演のTVドラマ『祭りばやしが聞こえる』の主題歌にも使われた、柳ジョージのデビュー・シングルだ。

バックの演奏はレイニーウッドではなく、萩原健一の当時バックバンドだったNadjaバンドだ。どうしてそうなったのかはわからないが、大人の事情みたいなものか。

70年代米国の都会的なソウル、当時で言う「ニュー・ソウル」みたいなクールなアレンジがめちゃカッコいい。

作・編曲は「勝手にしやがれ」「サムライ」「時の過ぎゆくままに」などで沢田研二の黄金時代を支え、日本歌謡界をリードした作曲家、大野克夫だ。

萩原健一は柳ジョージを見出し、柳のブルージーな声やレイニーウッドのサウンドを気に入り、彼らを引き連れてツアーを回ったり、彼らが書いた曲をカバーした。

柳が当初、全編英語で歌っていた「Weeping in the Rain」を、「英語じゃダメだって。日本語だけど英語で歌ってるようなフィーリングで書き直してくれ。騙されたと思ってやってみろ」と説得し、日本語版の「雨に泣いてる」を録音させ、それを自身が主演するTVドラマ『死人狩り』の主題歌に抜擢すると大ヒットし、彼らの出世作となったのだった。

柳ジョージにとってショーケンは、自身を世に出してくれた大恩人だった。

その柳ジョージは2011年に、ショーケンは2019年に、世を去った。

日本からカッコいい漢が、どんどんいなくなっていく。

https://www.youtube.com/watch?v=chw2M13uqlg