明るくポップな自信に満ちた傑作 〜スウェード『カミング・アップ』(1996)【わたしが選ぶ!ロック名盤500】#362

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【わたしが選ぶ!ロック名盤500】#362
Suede
“Coming Up” (1996)

前作『ドッグ・マン・スター』の制作中に、スウェード・サウンドの核とも言えるギタリスト、バーナード・バトラーが大喧嘩の末に脱退し、アルバムの仕上がりもその影響なのか、この世の終わりのような陰鬱さだったものだから、「ああ、これでもうスウェードは終わったな」と思ったものだった。

いや、まったくわたしの見込み違いだったが、しかし嬉しい見込み違いだった。

それから2年後、500人の候補の中から選ばれたという新ギタリストに17歳のリチャード・オークスを迎え、さらにはキーボードのニール・コドリングも加入し、新体制で3rdアルバムの制作に臨んだ。

路線を激しくポップ指向に変えた3rdアルバム『カミング・アップ』は1996年9月にリリースされ、見事全英1位を獲得した。日本でもオリコン27位まで上昇するなど、世界で120万枚を売り、シングル・ヒットも連発し、スウェードのキャリア最高のセールスとなった。カッコ内は全英シングル・チャートでの最高位。

【オリジナルCD収録曲】

1 トラッシュ(3位)
2 フィルムスター(9位)
3 レイジー(9位)
4 バイ・ザ・シー
5 シー
6 ビューティフル・ワンズ(8位)
7 スタークレイジー
8 ピクニック・バイ・ザ・モーターウェイ
9 ケミストリー・ビトウィーンアズ
10 サタデイ・ナイト(6位)

真っ暗な地下室の階段を上がって扉を開けたら、そこは眩しいほどに煌びやかで賑やかなスーパーマーケットだった、ぐらいに思える、前作からの振り幅が凄い。まるでT.レックスの『ザ・スライダー』みたいに、明るく、キャッチーで、恥ずかしげもなくポップで、自信に満ちていて、力強い、堂々たる傑作だ。

アルバム制作時のテーマは「Just ten hits (10曲すべてがヒット曲)」であり、アルバムを短く、鋭く、衝撃的なものにするために、あえて曲数を10曲に絞り込んだという。

17歳の新ギタリスト、リチャード・オークスは作曲面でも大きく貢献した。

ベーシストのマット・オズマンは、新メンバーとして加入した17歳のギタリストに対し、「トップ10に入るシングルを書かなければ、デッド・レッグ(太腿を蹴って足の筋肉を麻痺させる)を食らわすぞ!」と冗談で脅したところ、リチャードは6曲を書いてきて、そのうち4曲 (1,2,6,10)がトップ10ヒットとなった。そのうちの1曲は「デッド・レッグ」というタイトルだったが、後に「ビューティフル・ワン」に変更されたという。

↓ アルバムに先駆けた先行シングルとして全英3位のヒットを記録、新生スウェードの狼煙を上げた「トラッシュ」。リチャードのギターを何重にも重ねて音の壁を作り、煌びやかなシンセサイザーも加えて、超ポップな仕上がりになっている。

↓ 全英8位のヒットとなった「ビューティフル・ワン」。リチャードを脅してこの曲を書かせたマットは次のように語っている。「この曲を初めて聴いたとき、あまりに完璧すぎて笑ってしまったよ。リチャードはまだ子供 (17歳) だったのに、僕たちが喉から手が出るほど欲しかった『最高のリフ』をあっさり持ってきたんだ」(The Quietus インタビュー)

(Goro)

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