Bill Haley and His Comets
Crazy Man, Crazy (1953)
ビル・ヘイリーとマーシャル・ライトル(コメッツのベーシスト)によって書かれた曲で、これが世界初のロックンロール・ナンバーと言われている。
あの「ロック・アラウンド・ザ・クロック」が世界的なヒットになる2年前のことだ。
ビル・ヘイリー&ヒズ・コメッツはもともとクラブやダンス・パーティーなどで主に活動する、カントリー・スウィンギン・バンドだったが、より踊り出したくなるような昂揚感のある音楽にしようと、黒人のR&Bの要素を加えて行ったのが彼らのロックンロールの成り立ちだった。
当時は白人が黒人の音楽をやるなんてことはご法度だった時代だ。その人種の壁を打ち壊したのは、当時としてはかなり過激で、非常識で、クレイジーなことだったのだ。
大人たちは眉をひそめ、ロックンロールを野卑で下品な音楽と嫌ったが、若者たちは熱狂した。若者たちに新しい価値観が生まれ、世代間の断絶が生まれ、ロックンロールは古い価値観に対する反抗の象徴となっていった。
ちょうどこの曲ぐらいからビル・ヘイリーはバンドにサックスとドラムを加えた。
この曲は彼らにとって初めてのヒット曲で、全米チャート12位、最終的に100万枚を売り上げた。「これだ!ロックンロールは売れる!」そう思ったに違いない。実際、めちゃくちゃ儲かったらしい。
まるで中身なんかない歌だけど、要は昂揚感や熱狂を煽って踊らせることを目的にしているのはこのカッコいいMVを見てもわかる。
生まれたての赤ちゃんロックンロールにしてはなかなかの完成度だし、「Go! Go! Go! Everybody!」なんてコーラスは、かなりイイ感じだ。
これが本来のロックンロールの姿だったのは間違いない。
ロックンロールなんて、中身なんてカラッポでも、カッコよくて、クレイジーで、興奮できて、楽しければそれでいいのである。
(Goro)