Nick Cave & The Bad Seeds
The Weeping Song (1990)
ニック・ケイヴの初期の、暗くて前衛的でおどろおどろしい音楽の印象から、当時のロッキング・オン誌上では「暗黒大王」などとイジられ、さらには同誌のインタビューで「音楽から狂気を感じる」などと言われてブチ切れていたニック・ケイヴ。
しかしそんな彼の作風が一変したのが、「歌」に溢れた6thアルバム『ザ・グッド・サン(The Good Son)』だった。
作風が一変したのは、ヘロインを断つために活動拠点をロンドンからブラジルに移し、あらためて自分と音楽を見つめ直したことが影響したようだった。
わたしはこのアルバムでニック・ケイヴのファンになった。
どこかレトロな趣さえある楽曲が並んでいるけれども、決して甘くなり過ぎないし、彼の魅力的な低音ヴォイスで歌われると真っ直ぐに心に響く。
この曲はそのアルバムからのシングルで、ザ・バッド・シーズのギタリスト、ブリクサ・バーゲルトとのデュエットのスタイルで歌われている。
ブリクサ・バーゲルトは、1980年から活動しているドイツの前衛音楽集団、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンの中心人物だ。
ニック・ケイヴと気が合ったのか、2003年まで彼はノイバウテンとバッド・シーズをかけもちで活動していた。まあたぶん、ノイバウテンだけでは食えなかったのだろう。どの芸術分野でも、前衛で食っていくのはなかなか厳しいらしい。
ノイバウテンでのブリクサは囁いたり怒鳴ったり絶叫したりするだけで、こんなにガッツリ歌うということはなかったと思うけど、ここではあのバリトン・ヴォイスのニック・ケイヴのさらに下を歌うバス・ヴォイスを披露している。
このちょっとワイルドな見た目の2人のBL風デュエットにシビれた女子ファンも当時は少なからずいたものだ。
(Goro)

コメント
連続の投稿、ご容赦ください。
1990年代中盤のこと、当時東京で自身が住んでいたアパートの近くの居酒屋で食事をしていた時に仲良くなったオーストラリア人の女性(カップル)がいて、バーベキューをしたり花見をご一緒したりしていたのですが、ある時、「ミュージシャンをしている学生時代の友人がライブのために来日するが、終演後に飲みに行くか?」と誘われた時の友人というのがニック・ケイブでした。
「ベルリン天使の詩」は既に観ていたし、名前も存在も当然知っていましたが、CD等はまだ未視聴で、そこまで知識・経験・思い入れがなかったことと、既に就職して忙しかったこともあって断ってしまったんですよね….思い返すと本当にもったいないことをしました。