
Manic Street Preachers
You Love Us (1991)
“ユー・ラヴ・アス”だ?
なんてナルシスティックで傲慢なクソ野郎だろうと、当時は思ったものだった。
おまえらごときがジャケットにデ・ニーロやロバジョンなんかをコラージュするんじゃねえ、と当時は思ったものだった。ベティはまだしも。
マニックスの4枚目のシングルで、まだ人気なんて全然ない頃だ。ただその威勢のいいビッグマウスだけが音楽マスコミに取り上げられ、煽り立てられ、そして叩かれ、悪名だけが広まっていった頃だ。
当時のわたしは、今で言う「炎上商法」の匂いを感じて彼らとは距離を取っていたのだった。
わたしも二十代で、まだ若かった。そしてわたしも負けず劣らず、ナルシスティックで傲慢なクソ野郎だった。いわゆる同族嫌悪というやつだ。
でも今はこのわたしも年を重ね「ユー・ラヴ・アス? いいねえ。ロックをやる若者はそれぐらいの威勢の良さと自己顕示欲がないとね」なんて、逆に肯定できるところまで成長したのだった。商法なんてどうでもいい。大事なのは音楽だ。
このシングルは91年5月にヘヴンリィというインディ・レーベルから発売されたものの、全英62位とたいして売れなかった。
しかし、その半年後にコロンビアからメジャー・デビューすることになり、あらためて録り直したものが1stアルバム『ジェネレーション・テロリスト』に収録された。そして、その新バージョンがあらためてシングル・カットされると、全英16位と大健闘した。
曲自体は変わっていないのだけれど、サウンドの重厚感が大幅に変わり、まるでガンズ・アンド・ローゼスのような音作りに変わっている。これが功を奏して実に迫力あるロックンロールへと生まれ変わった。
PVの、ニッキーの背中に描かれた”FAKE”の文字が眩しい。
↓ ヘヴンリィからリリースされた最初のバージョン。冒頭にペンデレツキの「広島の犠牲者に捧げる哀歌」が、エンディングにイギー・ポップの「ラスト・フォー・ライフ」が、それぞれサンプリングで使われている。
↓ 『ジェネレーション・テロリスト』のために再録音され、92年1月にシングルカットされた新バージョン。
(Goro)