はじめてのパブ・ロック【必聴10組10曲】10 Pub-Rock Songs to Listen to First

パブ・ロックの起源は、1970年頃に遡る。

元アニマルズのチャス・チャンドラーに招かれ、彼のプロデュースでデビュー・アルバムを録音するためにロンドンへやってきたサンフランシスコのバンド、エッグズ・オーヴァー・イージーが、そのロンドン滞在中にパブでアルバイト的に演奏したのがそもそものきっかけだった。

彼らの音楽はザ・バンドやザ・バーズ、クロスビー・スティルス&ナッシュなどの二番煎じみたいなものだったが、当時のイギリス人には新鮮だったのか、ライブは盛況だったという。

そんな彼らと親交を深め、彼らの音楽に影響を受け、彼らを手本にしてパブで演奏を始めたのが、ニック・ロウを中心とするイギリスのバンド、ブリンズリー・シュウォーツだった。

彼らは英国のバンドとしては異色とも言える、スワンプ・ロックを基調にした作風で、レコードはそれほど売れなかったものの、パブでは人気を博したという。その後、パブで演奏するミュージシャンやバンドが続々と現れ、彼らを〈パブ・ロック〉と括って呼ぶようになった。

その定義はただパブで演奏していたというだけで、音楽的な共通性を目指したわけではないものの、指向としては50~60年代の初期ロックンロールやポップス、ブルースやカントリーなどのルーツ・ミュージックに回帰したものが中心だった。

パブでの演奏は、その小さなステージや簡易な機材という環境や、労働者階級の客層に合った、ビールが進むような、シンプルで気楽に楽しめるものが好まれたのだろうと想像できる。

それは当時のブリティッシュ・ロックの主流だったハード・ロックやアート・ロック、プログレッシヴ・ロックなどの複雑難解なロックの流行とは真逆なものであったが、しかしこの原点回帰やD.I.Y.精神は、英国インディ・シーンの誕生と共に、直後のパンク・ロック勃興の土壌にもなっていった。

パブ・ロックなんて地味でアングラなイメージがあるけど、英国ロック史においてはまあまあ重要な役目を果たしたとわたしは考えている。

以下は、わたしがお薦めするパブ・ロックを代表する10組の代表曲10曲です。

エッグズ・オーヴァー・イージー
ヘンリー・モーガン(1972)

Eggs Over Easy – Henry Morgan

米サンフランシスコのバンドで、彼らが1970年に1stアルバムを録音するために渡英したものの結局中止となり、ロンドンのパブでアルバイト的に演奏を始めたことが、パブ・ロックの起源となった。

この曲は、アメリカに帰国後に録音した、彼らにとって唯一のアルバム『グッド・アンド・チープ』の収録曲だ。

Henry Morgan

ブリンズリー・シュウォーツ
メリー・ゴー・ラウンド(1972)

Brinsley Schwarz – Merry Go Round

ロンドンのパブでカントリー・ロックを演奏していたエッグズ・オーヴァー・イージーと出会い、彼らの音楽性や次々と客のリクエストに応えていくスタイルに影響を受け、自らもパブで演奏を始めたのがこのニック・ロウ率いるブリンズリー・シュウォーツだった。英国パブ・ロックの元祖的存在だった。

この曲は名盤3rd『シルヴァー・ピストル』収録曲。「英国のザ・バンド」と評された、アメリカ南部の土の香りを想起させるようなサウンドが魅力だ。

Merry Go Round

デイヴ・エドモンズ
アイ・ヒア・ユー・ノッキン(1970)

Dave Edmunds – I Hear You Knocking

1970年にこの曲で全英1位、全米4位の大ヒットを放った英ウェールズ出身のデイヴ・エドモンズは、その後同郷の後輩にあたるブリンズリー・シュウォーツのニック・ロウと出会って親交を深め、共にパブに出演したり、バンドを組んだり、プロデュースをしたりする間柄になる。ニック・ロウと共に、パブ・ロック界隈の精神的支柱のような存在だ。

I Hear You Knocking

ドクター・フィールグッド
シー・ダズ・イット・ライト(1975)

Dr. Feelgood – She Does it Right

パブ・ロックの中でも、特にクソかっけーバンドとして知られたのがこのドクター・フィールグッドだ。この曲は1stアルバム『ダウン・バイ・ザ・ジェティ』のオープニング・トラックだ。

初代ギタリストのウィルコ・ジョンソンの、ピックを使わない異様に切れ味の鋭いカッティングが特徴のギターは、一度聴いたら病みつきになるカッコ。ヴォーカルのリー・ブリローの噛みつかんばかりの勢いで吐き捨てようなヴォーカルもクールだ。

その後のパンク・ムーヴメントでは彼らに影響を受けたバンドが続出することになる。

Dr.Feelgood 【She Does It Right】

エディ&ザ・ホット・ロッズ
ゲット・アクロス・トゥ・ユー(1976)

Eddie & The Hot Rods – Get Across To You

ドクター・フィールグッドと同じく英サウスエンド出身で、アーリー・パンクと言えそうな疾走感とキレの良さを持っていたのがこのエディ&ザ・ホット・ロッズ。この曲は1stアルバム『十代の暴走』のオープニング・トラックだ。

ちなみに彼らはJ・ガイルズ・バンドをお手本にしていたのだそうだ。

Eddie & the Hot Rods – Get Across To You

グレアム・パーカー&ザ・ルーモア
ドント・アスク・ミー・クエスチョン(1976)

Graham Parker & The Rumour – Hey Lord Don’t Ask Me Questions

ロンドン出身のグレアム・パーカーはブリンズリー・シュウォーツのメンバーとの交流をきっかけにパブで歌うようになったシンガーで、この曲はニック・ロウのプロデュースによる1stアルバム『ハウリン・ウインド』からのシングル。

「おい神よ、俺に訊くんじゃねえ!」と歌うやさぐれR&Bだ。

Graham Parker – 'Hey Lord Don't Ask Me Questions'

イアン・デューリー&ザ・ブロックヘッズ
セックス&ドラッグ&ロックンロール(1977)

Ian Dury – Sex & Drugs & Rock‘n’Roll

ロンドン出身のイアン・デューリーのデビュー曲で、全英2位の大ヒット曲。このデビュー時ですでに34歳だったという遅咲きだ。

「セックス、ドラッグ、ロックンロール、おれの脳みそと身体に必要なのはそれだけ」と歌う、本能の赴くままに生きる彼らしい、クールなファンク・ナンバーだ。

TOPPOP: Ian Dury & The Blockheads – Sex & Drugs & Rock 'n' Roll

ジョー・ジャクソン
イッツ・ディファレント・フォー・ガールズ(1979)

Joe Jackson – It’s Different For Girls

元々は音楽学校でクラシック音楽の作曲の勉強をしていたのに、挫折してパブでロックを歌うようになったという変わり種。
この曲は2ndアルバム『アイム・ザ・マン』からのシングルで、全英5位となる大ヒットとなった。

Joe Jackson – It's Different For Girls

エルヴィス・コステロ
オリヴァーズ・アーミー(1979)

Elvis Costello – Oliver’s Army

リヴァプール出身のエルヴィス・コステロはパブ・ロック界隈からのいちばんの出世頭だ。その天性の声とポップ・センス、そしてソングライティングの才能は最初からズバ抜けていた。

デビューから5枚目までのアルバムはすべてニック・ロウのプロデュースで、この曲は3rd『アームド・フォーセス』からのシングル。全英2位の大ヒットとなった代表曲だ。

Elvis Costello & The Attractions – Oliver's Army

ニック・ロウ
恋する二人(1979)

Nick Lowe – Cruel to Be Kind

最後は、ブリンズリー・シュウォーツを率いたパブ・ロックの中心的・象徴的存在であり、プロデューサーとしても重要な役目を果たしたニック・ロウの、全英12位、全米12位となった自身最大のヒット曲。彼らしいポップ・センスがあふれ出たような名曲だ。

Nick Lowe Cruel to be kind 1979 Top of The Pops

選んだ10曲がぶっ続けで聴けるプレイリストを作成しましたので、ご利用ください。

♪プレイリスト⇒ はじめてのパブ・ロック【10組10曲】はこちら

入門用にパブ・ロックのアルバムを最初に聴くなら、スワンプ・ロック系のブリンズリー・シュウォーツのベスト盤、ニック・ロウのポップを極めた1st『ジーザス・オブ・クール』、ドクター・フィールグッドのキレッキレ1st『ダウン・バイ・ザ・ジェティ』がお薦め。三者三様の名盤です。

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