⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
U2
“Achtung Baby” (1991)
言うまでもないがU2は、21世紀のロックシーンにおいても世界最高のロックバンドのひとつである。
もうデビューから44年も経つというのに、現在に至るまでシーンの最前線から退いたことがなく、常に革新的なサウンドを探求してやまない、生真面目でストイックでありながらとことん好き放題やってくれる滅法楽しいロック・バンドである。
「仕事が出来る」という言葉が似合うロックバンドだ。彼らならサラリーマンに転身しても楽しみながらバリバリと働いて、会社を業界ナンバーワンに育て上げることぐらいのことはやるだろう。
真面目は美徳である。
不真面目はいくら頑張っても、絶対に真面目にはかなわないのである。これは人生における真理である。わたしは50歳を過ぎた頃にやっとわかったが、なにしろもう遅すぎた。
ときにはU2も、悪ふざけのような曲を書いたり、悪ふざけのようなショーをしたりもする。しかし彼らは悪ふざけにさえも徹底的に磨きをかけて、おそろしく完成度の高い悪ふざけを行うのである。わたしは彼らのそんなユーモアのセンスも好きだ。
彼らが最初に天下を取ったのは、1987年の5枚目のアルバム『ヨシュア・トゥリー』だった。
スケールの大きな世界観を持つ、美しいアルバムである。ふつうならこれ1枚あればロック史に永久に名を残すことができるだろう。
でも彼らは次のアルバム、1991年11月にリリースされた本作、『アクトン・ベイビー』で驚くべき進化を見せた。台頭するオルタナティヴ・ロックにも親愛のエールを送りつつ、メジャーからマイナーまで最新流行のロックやポップスをすべて肯定的に取り入れて完全にU2化してみせた、モンスター級の大傑作アルバムだった。
収録された12曲は、全部シングルカットできると思わせるほどの、とんでもなく充実した出来だった。
当時は若い荒削りなオルタナ系バンドのアルバムを聴くことが多く、まあ1曲か2曲面白い曲があればOK、というレベルに慣れきっていたわたしにとっては信じ難いアルバムだった。この12曲を1曲ずつくれてやれば12のバンドが新たに世に出ることが出来るのに、と思ったほどだ。
1991年というロックシーンの激動の時代に、時代遅れになるどころか、余裕でトップランナーであることを彼らは証明してみせた。実力の違いを見せつけられた思いだった。格が違うなあ、とわたしは思った。
全米1位、全英1位の世界的ヒットとなった『アクトン・ベイビー』は、極上のオルタナティヴ・ポップ・アルバムである。
実験的で新しい響きを創造しながら、それを見事に斬新かつ最上のポップソングに仕上げている。
U2は4人とも凄いプレーヤーだが、とくにわたしはジ・エッジのギターが面白くてたまらない。彼の、音色に対する飽くなき探究と、変幻自在のプレイがU2サウンドの柱となっていることは間違いないだろう。
↓ アルバムからの2枚目のシングルとなった「ミステリアス・ウェイズ」。全英1位、全米9位。
↓ 3枚目のシングルとなった「ワン」は感動的なバラードだ。全英1位、全米10位。
(Goro)