ジョン・フォガティ/センターフィールド (1985)

CENTERFIELD [LP] (POP-OUT GATEFOLD, REISSUE) [12 inch Analog]

【80年代ロックの名曲】
John Fogerty
Centerfield (1985)

1972年にC.C.R.を解散した後、ソロ・アーティストとして活動したジョン・フォガティは、1975年に所属レコード会社のソウル・ゼインツ社長との間で、金銭面、著作権、契約問題で訴訟沙汰となった。その結果、過去の歌も歌えない、新曲も出せないという、地獄のような状況になり、それがなんと10年間も続くことになる。

そして10年ぶりに発表することが出来たのがソロとして3作目のアルバム『センタ―フィールド(Centerfield)』だった。

この曲はそのタイトル・トラックだ。

野球をテーマにした歌で、今まさにスタジアムで試合が始まろうとしているワクワクするような空気感で、「監督! おれを試合に出してくれ! 準備は出来てるぜ! センターフィールドを制するのはこのおれだ!」と歌う歌詞だ。

この歌詞はダブル・ミーニングで、10年ぶりに音楽シーンに戻ることができて嬉しくてたまらない気持ちを込めて、もう一度その中心(センターフィールド)に返り咲くことを宣言しているようでもある。ジャケットに映っているボロボロの古いグローブは、ジョン・フォガティ自身を表しているのかもしれない。

そしてその宣言通り、このアルバムは全米1位となってジョン・フォガティの10年ぶりの生還を祝福したのだった。

さすが、アメリカを愛し、アメリカに愛された男だ。野球とロックが好きでネルシャツを着ているアメリカ人は、全員このレコードを買ったに違いない。

「ラ・バンバ」を彷彿とさせるようなイントロのギターの音が、なんとも張りのある、艶やかで良い音だ。

しかしこの後、またしても宿敵ソウル・ゼインツが、アルバム『センターフィールド』の収録曲について、彼が著作権を持つC.C.R.時代の曲に似ているだとか、別の曲では自分たち経営者を揶揄しているなどとイチャモンを付けまくり、ふたたび訴訟を起こしたのだった。

ジョン・フォガティもさすがに嫌気がさして、その後、隠遁生活に入ってしまう。

哀しむべきことに、彼ほどの才能を持ったアーティストが、30~60歳の30年間でたった4枚のアルバムしか発表することができなかったのだ。

2000年代に入ってようやく訴訟問題も解決し、古巣のレコード会社からアルバムを出すなど精力的に音楽活動を再開した。

それにしても、個人的な憎悪のせいだったのか金のためだったのか知らないが、類まれな音楽的才能を持ち、世界中に多くのファン持つアーティストが、最も脂の乗った働き盛りの数十年を理不尽な訴訟沙汰によって奪われたことに、強い憤りと哀しみを禁じ得ない。

(Goro)