⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
Radiohead
“The Bends” (1995)
死にかけているようにも見えれば、エクスタシーに達しているようにも見える、ジャケットの救命訓練用人形のなんとも言えない表情がアルバムの内容によく合っていると思う。
1995年3月にリリースされたレディオヘッドの2ndアルバム『ザ・ベンズ』だ。
前作の1st『パブロ・ハニー』は、シングル・カットされた「クリープ」が全英7位とヒットしたが、アルバムは22位とそこまで伸びなかった。内容はわたしは好印象だったが、まだ発展途上の感はたしかにあった。
本作は当初から制作が難航し、一旦は中止にまで追い込まれたものの、プロデューサーをジョン・レッキーに替えてレコーディングが再開されることになった。そして「メルトダウン状態だった」と自身で語るほど苦悩していたトム・ヨークにレッキーは、ジェフ・バックリィのライヴを観に行くよう薦めたという。
当時「天使の歌声」とも評されていたジェフの、魂を振り絞って歌うようなライヴを体験してトムは開眼し、一気にレコーディングが軌道に乗ったという。
本作におけるトム・ヨークの、まるで死にかけみたいに弱々しいけれども、しかし純粋無垢な美しさに満ちた、心に突き刺さってくるヴォーカルにわたしは激しく惹かれた。
そして、バンドの音楽性を決定づけているもうひとつの才能、ギターのジョニー・グリーンウッドによる、トムと寄り添い一緒に歌うような優しいギター、あるいはすべてを切り裂くような凶暴なギターのコントラストがアルバムにメリハリと緊張感を与える。さらには全編を通奏するアコースティック・ギターが、豊かな音楽を奏で、聴く者の心を震わせる。
【オリジナルCD収録曲】
1 プラネット・テレックス
2 ザ・ベンズ
3 ハイ・アンド・ドライ(全英17位)
4 フェイク・プラスティック・トゥリーズ(全英20位)
5 ボーンズ
6 ナイス・ドリーム
7 ジャスト(全英19位)
8 マイ・アイアン・ラング(全英24位)
9 ブレットプルーフ…アイ・ウィッシュ・アイ・ワズ
10 ブラック・スター
11 サルク
12 ストリート・スピリット(全英5位)
5曲がシングル・カットされ、アルバムは全英4位のヒットとなった。
わたしは実を言うとレディオヘッドは「クリープ」に衝撃を受けたものの、それ以降は追っかけていなくて、本作がリリースされたことすらしばらくは知らなかった。
しかしたまたま購入した英インディーズ・シングル集のコンピで「フェイク・プラスティック・トゥリー」を聴いて、わたしは胸を貫かれた。それから本気でレディオヘッドを聴くようになったのだ。本作では特にスローな楽曲、3,4,6,8,9,12などにわたしは惹かれる。
彼らはこの作品で、レディオヘッドの新世界を確固たるものとして創造した。
それはロックが行き着いた、長い長いカーニバルが終わった夜の、この世の果てのような寂寥感が漂う世界でもあった。
そしてこの後さらにレディオヘッドは、このときジョン・レッキーが雑用係として連れてきた人物、ナイジェル・ゴッドリッチと共に、ロックの彼岸を越えることになる。
↓ 本作より半年前にシングルとしてリリースされた「マイ・アイアン・ラング」。これをきっかけにレディオヘッドの新世界への展望が開けたのだろうと思う。
↓ わたしが胸を貫かれた、初期レディオヘッド屈指の名曲「フェイク・プラスティック・トゥリー」。
(Goro)
![The Bends [国内盤 / 解説・歌詞対訳付] (XLCDJP780)](https://m.media-amazon.com/images/I/510ihREZNkL._SL500_.jpg)
