米マサチューセッツ州ボストンで、ヴォーカルのスティーヴン・タイラーとギターのジョー・ペリーを中心に結成されたエアロスミスは、1973年にデビューした。
ヤードバーズやレッド・ツェッペリンやなどのイギリスのブリティッシュ・ビート~ハード・ロックのスタイルと、アメリカのルーツ・ミュージックを融合させ、さらにポップなメロディも書けるバンドで、当時のアメリカでは無敵のハード・ロック・バンドだった。
しかし、最初の5年ほどはエネルギッシュでオリジナリティ溢れる傑作アルバムを連発したものの、70年代末頃からドラッグの影響で活動に支障をきたすようになり、メンバーの脱退が相次ぎ、アルバムも不評でセールスも伸び悩み、バンドは崩壊して活動停止状態となる。
およそ10年ほどの低迷期を経て、ドラッグを断ち、1987年の『パーマネント・ヴァケーション』からのヒット曲を連発して奇跡の復活を果たすと、次作はさらにそれを上回る名盤『パンプ』で不動の人気と評価を獲得する。それからの快進撃は凄まじく、世界で最も人気のあるバンドのひとつへと成長した。
やっぱり麻薬なんてやっちゃダメだな。
もともと彼らの最大の魅力は、スティーヴンとジョーによるソングライティングにあった。
ヘヴィなリフからキャッチーなメロディ、ワイルドなハード・ロックから、泣きメロのバラードまで幅広く書ける2人の才能は、ハード・ロックという枠に収まらず、広く大衆に受け入れられるポップでコマーシャルな要素を持ちながら、質の高い楽曲を創造することに成功したロック・バンドだった。
こんなバンドはもう二度と現れないかもしれない。
以下は、エアロスミスの至極の名曲ベストテンです。
I Don’t Want to Miss a Thing
映画『アルマゲドン(Armageddon)』の挿入歌となった、大バラード。エアロスミスにとって唯一の全米No.1ヒットとなった代表曲だ。
ダイアン・ウォーレンという人の作詞・作曲なので、エアロスミスらしくないのは仕方がないが、人類の滅亡を救うという壮大な物語の芯にある父と娘の泣かせる物語と共に記憶され、世界中を涙で溢れさせた曲だ。
『アルマゲドン』でブルース・ウィリスの娘を演じたのはスティーヴンの娘、リヴ・タイラーだ。
PVでは、父と娘のモニター越しの感動シーンを実の父娘で再現するという荒業を披露した。
Janie’s Got a Gun
エアロスミスの復活を決定的にした名盤『パンプ(PUMP)』からのシングルで、全米4位の大ヒット曲。
父親にレイプされた娘が父を銃で撃ち殺すという内容の、児童レイプと銃社会の問題の両方を扱ったハードな社会派ソング。父を殺した少女は責められるべきではない、と歌っているように聴こえる。「逃げろ! 逃げろ!」と歌うリフレインが悲痛だ。
ドラマチックな展開で、サウンドもエアロスミスの新境地と言えるものだった。
Dude (Looks Like a Lady)
70年代末からの10年近い低迷期を脱出するきっかけとなったのがこの曲。『パーマネント・ヴァケイション(Permanent Vacation)』からの先行シングルで、全米14位の大ヒットとなった。
70年代のエアロのゴツゴツしたハード・ロック・サウンドとはまた違うコマーシャルなサウンドだが、ソングライターにデズモンド・チャイルド(キッスの「ラヴィン・ユー・ベイビー」やボン・ジョヴィの「リヴィン・オン・プレイヤー」を書いた人)も参加し、もともとタイラー&ペリーが持っているポップなソングライティングをより生かすことになるスタイルへと変貌し、新生エアロは無双状態になっていく。
What It Takes
復活第2作『パンプ』からのシングル。このアルバムの中でわたしがいちばん好きなのがこの曲だ。アルバムからの3枚目のシングルとなり、全米9位の大ヒットとなった。
この曲もまたポップなメロディを持ち、これまた新境地と言えるカントリー・テイストのアレンジが施されている。
エアロ流のカントリー・ロックと言えるかもしれない、パワー・バラードの名曲だ。
Rag Doll
『パーマネント・ヴァケイション(Permanent Vacation)』からの3発目のシングル。全米17位。
このアルバムの中で最も好きな曲だ。独特のグルーヴがカッコよく、猥褻さとエレガントさを併せ持つような、不思議な魅力のある曲だ。
Toys in the Attic
70年代エアロスミスの最高傑作『闇夜のヘヴィ・ロック(Toys in the Attic)』のタイトル曲。
パンク・ロックのようなスピード感と、パワフルなギターがカッコいい、エネルギッシュなオープニング・トラックだ。
Back in the Saddle
4thアルバム『ロックス(Rocks)』のオープニング・トラックで、シングルとして全米38位のヒットとなった。
70年代のエアロの中でも重量級の曲のひとつで、エアロ屈指のヘヴィメタル・ナンバーとも言える。グツグツと血がたぎってくるようなアツい曲だ。スティーヴンの飛沫を全身に浴びそうな歌い出しも最高。
Dream On
デビュー・アルバム『野獣生誕(Aerosmith)』収録曲。発売当初はまったく売れなかったが、この曲がラジオからジワジワと火が点き、2年後にシングルとして再発売されると全米6位まで上がる、エアロにとって初めての大ヒット曲となった。
スティーヴン・タイラーが書いた曲だが、彼にこういうロマンティックでキャッチーなメロディーを書ける資質があったからこそ、90年代以降も世界的な人気バンドになることが出来たのだろう。
一度聴いたら忘れられない、極上の美しさのバラードだ。
Walk This Way
70年代の最高傑作『闇夜のヘヴィ・ロック(Toys in the Attic)』からのシングルで、全米10位の大ヒットとなった。ロック史上最高のギター・リフのひとつだ。
RUN DMCとのコラボもあったけれど、75年に発表されたとは信じがたいぐらい、まるでレッチリみたいなミクスチャー・ロックがすでに完成している。
Sweet Emotion
『闇夜のヘヴィ・ロック』からのシングルで、全米36位。発表当時の邦題は「やりたい気持ち」だった。そんな直截的ズバリでよかった時代だったのだ。
不穏なベースのリフから始まるイントロだけでもうゾワゾワする。
コーラスもギターのリフも全体のグルーヴも、最高にカッコいい名曲だ。
以上、【名曲ベストテン】 Greatest 10 Songsでした。
入門用にエアロスミスのアルバムを最初に聴くなら、『マキシマム・ベスト(The Essential Aerosmith)』がお薦め。最初に聴くべき代表曲はすべて網羅されています。
(by goro)