⭐️⭐️⭐️
“Urban Cowboy”
監督:ジェームズ・ブリッジズ
出演:ジョン・トラヴォルタ、デブラ・ウィンガー
音楽:ラルフ・バーンズ
テキサス州のはずれの大田舎から、同州の都市ヒューストンに出てきた主人公(トラヴォルタ)が、ボーリング場みたいな巨大酒場で知り合った女性(ウィンガー)と恋に落ち、結婚し、喧嘩し、W不倫し、周りを巻き込んだ騒動に発展し、大酒場のロデオ・マシーンでの対決などがあって、最後には仲直りして元の鞘に収まるという、てんやわんやの恋の物語だ。
本筋は音楽物語ではないけれど、シーンの半分以上が実際にあったという7,000人以上入れる有名な巨大酒場を舞台にしていて、地元の肉体労働者たちや女の子たちが集まり、ライブ演奏のステージがあったり、ダンスホールがあったり、ゲームがあったり、ロデオ・マシーンがあったり、という場所なので、全編にカントリー・ミュージックのサウンドトラックが充実している作品だ。ボニー・レイットがステージで演奏している姿なんかもチラッと映る。
わたしは自分がずっと地方都市で生まれ育ったせいか、洋画でも邦画でもちょっとダサい地方都市を舞台にしたものが好きという性癖が昔からある。
地方都市のほうが大都会よりも生活のリアリティを感じるし、「一生ここで生きる」という閉塞感が充満している負のエネルギーみたいなものが染み出してくるのがたまらない。負のエネルギーが暴発した挙句の、むき出しの欲望や暴力が噴き出す、ヒリヒリするようなスリルを感じたりもする。
この映画もまた、ギラついた肉体労働者たちやギラついた女たちの欲望のエネルギーの匂いがムンムン立ち込めるような、ちょっとしたきっかけで暴発しそうな、そんなアブない感じが魅力的だ。
しかしこの巨大酒場は素晴らしい。こんなところが近くにあったらいいなあ。週2で通いたい。しかも女たちはすぐやらせる女ばっかりだ。まあ、トラヴォルタだからなのかもしれないけれど。
トラヴォルタは大好きな俳優のひとりだ。演技も上手いけど、ダンス・シーンもさすが。男女2人で踊るカントリーのツー・ステップでもキレがよくてカッコいい。
男勝りで威勢のいい性格だったはずのデブラ・ウィンガーが、あっちの男に殴られ、こっちの男に殴られしてるうちに徐々に大人しくなっていく様はなんだかリアリティがないなどと批判する人もいるらしいけど、わたしはそういうのは一般論で言うべきじゃなくて、この映画ではそういう人物を描いただけ、と思うことにしている。この映画は、べつにテキサスの男性や女性はだいたいこんな感じだ、と言っているわけではないのだ。たかだか映画に出てくる登場人物をなにかの象徴みたいにして、映画を批判したりするのはわたしは好きじゃないな。
(Goro)