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Meat Puppets
“Meat Puppets Ⅱ” (1984)
ミート・パペッツは米アリゾナ州出身の、カート(ヴォーカル&ギター)とクリス(ベース)のカークウッド兄弟とデリック・ボストロム(ドラム)の3人で結成されたバンドだ。後にオルタナティヴ系の名門インディー・レーベルとして有名になるSSTレーベルから1982年にデビューした。
その作風は唯一無二で、カントリーとパンクとハードコアとサイケの要素が混沌とした、独創的なソングライティングが特長だ。
まったく無名だった彼らが一躍世界的に有名になったのは、ニルヴァーナがMTVアンプラグドのライヴで彼らの曲を3曲もカバーしたことがきっかけだった。そのライヴにはカークウッド兄弟もサポート・メンバーとして出演していた。
カート・コバーンは最も影響を受けたアーティストにこのミート・パペッツを挙げているが、それは本作を聴けば一瞬で理解できるほどだ。異様に独特なコード展開やギターの奏法、フックのあるメロディなどはまさにニルヴァーナの元ネタといった感じだし、歌い方も少し真似ていることがわかる。
本作は1984年にリリースされた、ミート・パペッツの2ndアルバムである。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 Split Myself in Two
2 Magic Toy Missing
3 Lost
4 Plateau
5 Aurora Borealis
6 We’re Here
SIDE B
1 Climbing
2 New Gods
3 Oh, Me
4 Lake of Fire
5 I’m a Mindless Idiot
6 The Whistling Song
楽曲は、各々個性的な味わいのものが同居し、例えて言えば、野菜と焼肉とキムチをぶっ込み、少量のLSDを垂らしてグチャッとひと混ぜしたビビンバのようなアルバムである。
最初に聴いたときは、ヴォーカルは死にかけみたいな歌い方だし、曲調はバラバラでまとまりがないし、全体に今にも崩壊しそうな不安定さで、「なんだこりゃ」と思ったものだ。
しかしミート・パペッツはこの後一気に成長し(?)、スッキリと整理されたタイトなサウンドに到達して高い評価も得ていくのだけれども、そっちを聴いたら聴いたで今度は本作のこの不完全さ、凸凹感、気持ち悪さ、死にかけヴォーカルの凄みなど、唯一無二の味わいが恋しくなってしまったのだった。まあ、勝手なものであるが。
そんなわけで、ミート・パペッツと言えば、やっぱりこの2ndにとどめを刺すのである。
90年代に流行したグランジ・ロックは、ロック本来のリアリティを追求しながら、ただノイジーで激しいだけのものではなく、耳に残るフックとなるメロディや独創性を追求したものだった。その意味で、ミート・パペッツがグランジの手本となったのは当然のことと言えるだろう。
↓ ニルヴァーナがMTVアンプラグドでカバーした「Lake of Fire」。
↓ こちらも独創的な曲想と死にかけみたいなヴォーカルが魅力的な代表曲「Plateau」。
(Goro)