Ultravox
Vienna (1980)
1977年デビューなので、ウルトラヴォックスもあのパンク革命の真っただ中のイギリスでデビューしているのである。同じロンドン出身で、レコード・デビューはセックス・ピストルズと3カ月しか違わない。
この「ヴィエナ」は1980年7月にリリースされた4枚目のアルバムのタイトル曲だけれども、このいかにも80年代サウンドというイメージが強すぎて、彼らはてっきりパンクが終わってから出てきたものと思い込んでいた。
ウルトラヴォックスはこのシングルで全英2位となり、世界的なブレイクを果たした。
それまでは売れてなかったのだ。
きっとパンク・ムーヴメントは彼らには合っていなかったのだろう。80年代に入って盛り上がりを見せたニュー・ウェイヴの時代がやってきて、やっと彼らの本領は発揮されたのだ。
無機的でひんやりした、セラミックと合成樹脂で出来たような質感の電子音のサウンドは、ジャーマン・ロックやフランスのクラシック、ドビュッシーやラヴェルの影響を受けているらしい。
決して派手ではないが、しかし壮大でロマンティックだ。
サビの部分のピアノの響きが美しく、空から光に包まれた神様でも降りてくるみたいだ。
無機的な電子音に彩られる耽美的な世界観は、その後のシンセ・ポップやニュー・ロマンティックなどの80年代英国ロックに、ひとつの方向性を示した曲と言えるかもしれない。
ちなみに「Vienna」というのはオーストリアの首都、ウィーンのことだけれども、当然ながらというべきか、オーストリアのシングルチャートで1位を獲得している。
(Goro)