Ramones
Bonzo Goes To Bitburg (1985)
この曲は1985年6月にシングルとして発表され、彼らの9枚目のアルバム『アニマル・ボーイ』に収録された。シングルチャートではイギリスで81位、アメリカでは圏外と、まあいつものように、ヒットと言えるほどは売れていない。
わたしは若い頃に彼らのベスト・アルバム『ラモーンズ・マニア』でこの曲を知って、大好きになった。
ラモーンズのソングライティングのスキルは、エイトビートのロックンロールにかけてはチャック・ベリーやジャガー&リチャーズにも引けを取らないと思っているが、この曲もまたそんな彼らの才能と手腕を感じる。特別なことを何もしていないにもかかわらず特別な楽曲を創造するという、魔法のようななにかを持った、史上最高のロックバンドのひとつだ。
“ボンゾ”というのはレッド・ツェッペリンのドラマーのことではなくて、ロナルド・レーガンが俳優時代に出演したB級映画に出てくる猿の名前だ。当時、レーガン大統領に批判的な人たちは彼のことを”ボンゾ”と呼んで揶揄したらしい。
85年にレーガン大統領がドイツを訪ねたときに、第二次大戦における米独両軍の戦没者が眠るビットブルク墓地で献花したが、そこにはナチスの親衛隊も一緒に埋葬されていたことから、批判する声もあがった。この曲の原題「Bonzo Goes To Bitburg (ボンゾはビットブルクへ行く)」もそんな批判が込められているのだろう。
ただしこの原題は現在なぜか変えられていて、「My Brain Is Hanging Upside Down (頭の中がごちゃごちゃだ)」になっている。
靖国神社問題とよく似た批判だけれども、米国人戦死者のための献花なんだからべつにいいじゃん、なんてわたしなんかは思うのだけど、ラモーンズはレーガンを「ヒットラーみたいにだけはなるなよ」なんて揶揄しながらも、「TVにはうんざり、政治なんてちっともわからない、頭の中はごちゃごちゃだよ、どうにかしてくれ」と、結局なにが正しいかわからないってことを歌っているのかな、とも思う。
それなら今の時代でも通用するかもしれない。
まあなにしろ、新聞はまるで左翼団体の機関紙みたいだし、テレビの報道も平気で偏向報道をするので、真実を知ることなんてとても期待できないからだ。
この曲は2003年のアメリカ映画『スクール・オブ・ロック』でも使用されている。
バンドマンが金のためにニセ教師になって、小学生たちにロックを教えるというコメディ映画だったが、ロック好きのあいだでは好きな人も多い作品だ。
この曲に乗せて、その授業の様子をダイジェスト的に見せるシーンがある。下の動画がそのシーンだ。
ロック好きならこれを見て胸が熱くならない人はいないだろう。
(Goro)