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Pavement
“Slanted and Enchanted” (1992)
米カリフォルニアの若者4人プラスおっさん1人のバンド、ペイヴメントが1992年4月にリリースした1stアルバムだ。
その全体的に完成度の低いヘロヘロな感じが、ハイ・ファイの逆で「ロー・ファイ」と呼ばれ、ポップなメロディーとの組み合わせが新鮮で、人気を博した。
日本語で言うと「ヘタウマ」みたいなものか。
当時流行していたオルタナティヴ・ロックの、さらに一段下をいった塩梅だ。
世の中何がウケるかわからない。
特にひどいのは、まるでダンボールでも叩いているようなドラムだ。ロック史上いちばん貧乏臭いドラムの音だと思う。なのにこのドラムがなぜか楽曲を生き生きとさせる力強さやリアリティを持っているから不思議なものだ。
このドラムを叩いているのは、デビュー当時一人だけ40歳だったオッサン、ギャリー・ヤングだが、もともとは、ヴォーカルのマルクマスとギターのカンバーグが使っていた音楽スタジオの経営者だったという。頼まれてもいないのに「そこはこうした方がいい」などと口出しをしているうちに、正式にメンバーになったという。
【オリジナルCD収録曲】
1 サマーベイブ(ウィンター・ヴァージョン)
2 トリガー・カット/ウディッド・カイト・アット:17
3 ノー・ライフ・サインド・ハー
4 イン・ザ・マウス・ア・デザート
5 コンデュイ・フォー・セール
6 チューリッヒ・イズ・ステインド
7 チェスリーズ・リトル・リスツ
8 ロレッタズ・スケアーズ
9 ヒア
10 トゥー・ステイツ
11 パフューム-V
12 フェイム・スローワ
13 ジャッカルス,フォールス・グレイルス:ザ・ロンサム・エラ
14 アワ・シンガー
高級料理みたいにしっかり作り込まれた音楽ももちろんいいけど、えっ?これで完成なの? と思わせるような、もんじゃ焼きみたいなジャンクフードもまたいいものだ。
まあそれもスティーヴン・マルクマスの書く、曲の良さが芯にあってのことだけれども。
ギャリーはライヴのステージでは逆立ちを披露するなど盛り上げ役で人気者でもあったが、アル中&ヤク中であり、勝手にメジャー・レーベルと契約したりと暴走し始めたことで、翌年にはクビになってしまった。
2ndアルバムからは別のまともなドラマーが叩いていて、世間的には2nd以降の方が評価が高いようだが、わたしにはなんだかペイヴメントの特異性や奔放さが薄れてしまったように感じて少し残念な気持ちにもなったものだ。
↓ ペイヴメントのデビュー・シングル「サマー・ベイブ」。米国でも英国でもチャートにはまったくかすりもしていないし、MVだってロー・ファイそのものだが、わたしにとってはこの年最高のシングルのひとつだった。
↓ 2ndシングルとして英国でリリースされて初のチャート入りを果たした (74位)「トリガー・カット」。米国では見向きもされなかった。
(Goro)
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