Buzzcocks
Ever Fallen In Love? (1978)
バズコックスのフロントマン、ピート・シェリーは1976年にロンドンで、デビュー前のセックス・ピストルズのライヴを見て感銘を受け、まだパンク・ロックなど誰も知らなかった地元マンチェスターにピストルズを招聘し、自主ライヴを実現させた。これはバズコックスを語る時に必ず紹介される有名なエピソードである。
そのライヴにはたった42人しか客が集まらなかったものの、その中には後にバスコックスとなるメンバーのほかに、ジョイ・ディヴィジョンとなるメンバーと、ザ・スミスを結成するモリッシーらもいた。これが、マンチェスターにロックシーンが生まれた瞬間だったと言えるかもしれない。
そんな経緯で結成され、マンチェスターでの二度目のピストルズのライヴのときは前座も務めたバズコックスだが、その音楽は当時の怒れるパンク・バンドたちとはちょっと違う。
ピート・シェリーの優れたソングライティングは、シニカルなユーモアと、ひねりはあってもムダはない、2分間のポップソングだ。それをスピード感のある爽快な演奏で聴かせる。
上のジャケットは、1991年に発売されたベスト・アルバムだけれども、パンク・ロックに似つかわしくない可愛らしいデザインが、バズコックスによく似合っている。
わたしはこのベスト・アルバムで初めてバズコックスを聴いたのだったけれど、一聴して大好きになってしまった。翌年にはライヴも観に行った。
彼らはいかにもパンク・バンドらしく、攻撃的ではあるけれどもユーモアもあって、ラウドだけれどもポップセンスもあって、イギリスのラモーンズだな、とわたしは思ったものだ。
英国ロックというものは、60年代のブリティッシュ・ビートに始まり、ハード・ロック、パンク、ニュー・ウェーヴ、ネオ・アコ、ブリット・ポップ等々と様々なスタイルに変貌しながらも、ポップな芯だけは受け継がれてるんだなあとあらためて思う。
アメリカン・ロックの芯には「ルーツ・ミュージック」が、ブリティッシュ・ロックの芯には「ポップ」があるということなのかもしれないとわたしは思っている。
この曲は1978年にリリースされた彼らの6枚目のシングルで、全英12位(彼らにとってのシングル最高位)まで上がるヒットとなった代表曲だ。
そしてこの曲はイギリスの音楽誌、NME誌の1978年の「年間最優秀トラック」で1位に選出された。
(Goro)