本気のグーはズシンと響く 〜トム・ロビンソン・バンド『パワー・イン・ザ・ダークネス』(1978)【最強ロック名盤500】#251

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【最強ロック名盤500】#251
Tom Robinson Band
“Power in the Darkness” (1978)

言いたいことが山ほどある、心の叫びが止まらない、そんなやつの音楽はやっぱり圧倒的に力強い。

トム・ロビンソン・バンドは、ヴォーカル兼ベース兼ソングライターのトム・ロビンソンを中心にロンドンで結成されたバンドだ。1977年にリリースしたデビュー・シングル「2-4-6-8 モーターウェイ」がいきなり全英5位のヒットとなった。

彼らもまた当時のパンク・ムーヴメントの盛り上がりの中から出てきたが、彼らの音楽性は他とは少し違って、表現の幅も広く、技術もあり、激しくカッコいいギター・ソロもある、力強いロックンロールだ。わたしはこのバンドのギタリスト、ダニー・クストウのギターが好きだ。

その演奏の力強さは凡百のパンク・バンドなど蹴散らすほどであり、その芯を食ったメッセージは当時のどのパンク・バンドよりも圧倒的にリアルでシリアスだ。

本作は1978年1月にリリースされた、トム・ロビンソン・バンドの1stアルバムである。デビュー・シングルのヒットに続いてアルバムも全英4位のヒットとなり、トム・ロビンソンは一躍時の人となった。彼はこう語った。

「たったの9か月の間に、失業手当事務所での契約が、EMIとの契約へ変わり、ラジオで曲が流れ、TVに出演し、音楽誌の表紙を飾るという、めまいがするほどの高みに上りつめた」

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 Up Against The Wall
2 Grey Cortina
3 Too Good To Be True
4 Ain’t Gonna Take It
5 Long Hot Summer

SIDE B

1 Winter Of ’79
2 Man You Never Saw
3 Better Decide Which Side You’re On
4 You Gotta Survive
5 Power In The Darkness

トム・ロビンソンは同性愛者であることを自ら公言し、同性愛者に対する警察の横暴や一般に広く浸透している嫌悪や差別的な言辞を批判し、同性愛者の権利と解放を堂々と歌った、たぶん最初のアーティストである。彼は来日公演のステージで、日本語で「ボクハオカマデス」と胸を張って言い放ったそうだ。

そして彼は同性愛だけでなく、人種や性別や職業などすべての差別に対して本気で闘争を叫んだ、真のパンクスであった。ジャケの握りこぶしは、本気のパワーが漲る握りこぶしなのだ。歌詞だけでなく、バンドの激しく力強い演奏からも闘う姿勢はしっかり伝わってくる。やっぱり本気のやつは、熱伝導のスピードが違うのである。

アルバムはセックス・ピストルズの『勝手にしやがれ』と同じ、クリス・トーマスのプロデュースだ。このアルバムもまたワイルドでヘヴィなサウンドとポップな親しみやすさが両立し、本気のパワーが聴く者を圧倒するアルバムである。

↓ シングル・カットもされたオープニング・トラック「Up Against The Wall」は彼らの代表曲のひとつとなった。

↓ 全英5位のヒットとなったデビュー・シングル「2-4-6-8 モーターウェイ」は、当初のLPには収録されていなかったが、CD化の際にボーナス・トラックとして収録された、

(Goro)

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