新世紀のポップ・ミュージック 〜ビョーク『ポスト』(1995)【わたしが選ぶ!ロック名盤500】#356

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【わたしが選ぶ!ロック名盤500】#356
Björk
“Post” (1995)

30cmのアナログ盤なら部屋に飾りたくなるような素敵なアルバム・ジャケットのイメージそのままに、ビョークの2ndソロ・アルバムは、ポップと前衛、アートとエンターテインメント、シリアスとユーモア、美しさと過激さを併せ持った、一足早く新世紀のポップ・ミュージックを創造したかのようだった。

本作は1995年6月にリリースされた。

【オリジナルCD収録曲】

1 アーミー・オブ・ミー
2 ハイパー・バラッド
3 モダン・シングス
4 イッツ・オー・ソー・クワイエット
5 エンジョイ
6 ユーヴ・ビーン・フラーティング・アゲイン
7 イゾベル
8 ポッシブリー・メイビー
9 アイ・ミス・ユー
10 カヴァー・ミー
11 ヘッドフォンズ

オープニングの「アーミー・オブ・ミー」の不穏なイントロを聞いた瞬間に、マッシヴ・アタックの1stアルバム『ブルー・ラインズ』を思い出した。

おおっ、ブリストル・サウンドか? と思ってクレジットを見ると、プロデューサーの一人にトリッキーの名前があるのを見て、やっぱりと納得した。

トリップ・ホップとも呼ばれるブリストル・サウンド風のオープニングに始まり、アルバムは、テクノ、 IDM、ハウスなどのエレクトロニックと、ダンス・ミュージック、アンビエント、ジャズ、クラシック、インダストリアルなどを包括した、巨大テーマパークのような様相を呈している。

本国アイスランドで12歳で歌手デビューし、シュガーキューブスなどのバンドでの活動は「役不足」という感が否めないものだった。正直、彼女の超個性的な歌声が存分に生かされてはいない気がした。まるで、三つ星レストランの凄腕シェフがすき家で働いているかのように。

前作の世界デビュー作『デビュー』もまだ彼女がどこへ行こうとしてるのかよくわからないままだったけれど、しかし本作でようやく彼女は、彼女自身の世界観を確立したかのようだ。その唯一無二の歌声が、彼女自身の王国にときに高らかにときに安らかに響き渡り、民と動物たちに精気を与え、樹々や草花を喜びに揺らす。

前作では故郷のアイスランドで書かれた曲が大半を占めていたが、その後ロンドンに移り住み、その地での刺激的な生活が本作には大きく影響したとビョークは語っている。

「『デビュー』は内気で恥ずかしがり屋な私だったけれど、『ポスト』はもっと外向的で、都会の騒音に立ち向かっている私なの。アイスランドからロンドンに来て、毎日が爆発のようだった。」(Record Collector誌インタビュー 2002年)

アルバムは本国アイスランドで1位、英国で2位と大ヒットした。全米チャートでも32位まで上昇し、全世界で300万枚を超えるセールスとなった。

↓ オープニングを飾るブリストル・サウンド風の「アーミー・オブ・ミー」。シングル・カットされて本国で1位、英国で12位のヒットとなった。

↓ 歌の主人公は毎朝、パートナーが眠っている間に崖の上へ行き、スプーンやフォーク、古い車などのガラクタを崖下に投げ落とす、と歌う「ハイパー・バラッド」。パートナーと安穏に暮らすために、主人公はそうやって狂気となる部分を捨てるのだとビョークは説明している。

(Goro)

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