R.E.M.
“Out of Time” (1991)
あの時代に、轟音ギターもダンス・ビートもサンプリングもデジタル・サウンドもフィードバック・ノイズもまったく関係ないところで、大学生やオルタナ界隈のロック・リスナーから支持を集めていたのがR.E.M.だった。
1981年にデビューしたインディーズ時代から、パンク的な姿勢やニュー・ウェイヴ的な切り口を持ちながらも、アメリカン・ロックの原点である、60年代のフォーク・ロックやカントリーのトラディショナルな響きをサウンドの核にした音楽性は、当時の流行のどんなジャンルにも属さない唯一無二の存在だった。シンプルの極みのような、今時めずらしいほど清々しい音楽だなあと思って聴いたものだった。
本作は1991年3月にリリースされたR.E.M.の通算7枚目のアルバムである。
【オリジナルCD収録曲】
1 ラヂオ・ソング
2 ルージング・マイ・レリジョン
3 ロウ
4 ニア・ワイルド・ヘヴン
5 エンドゲーム
6 シャイニー・ハッピー・ピープル
7 ビロング
8 ハーフ・ア・ワールド・アウェイ
9 テキサーカナ
10 カントリー・フィードバック
11 ミー・イン・ハニー
メジャー2作目にしてまさかの全米1位、全英1位を獲得し、全世界で1,800万枚を売り上げる破格のメガヒットとなった。
あの、知る人ぞ知るジョージア州の学生街の人気者が、まさかこれほどの世界的成功を収めるとは、当時のわたしは夢にも思っていなかった。なんともまあ、ぶったまげたものだ。
楽曲はそれまでより格段にポップになり、キャッチーな歌メロがふんだんにある。
多くのゲスト・ミュージシャンを迎えながらもよく整理されたアレンジで、アコースティック楽器を中心に品の良いストリングスも加え、非常に聴きやすく、心地良い、万人向けのサウンドを作り出している。ファミリー向けのR.E.M.といった感じだ。
R.E.M.らしさと、らしくなさの両面が同居しているような作品でもあり、まあ、賛否両論があったのも頷ける。
売れまくったからといって、決して商業主義的な内容ではないが、若干はしゃすぎに思える楽曲もある。「シャイニー・ハッピー・ピープル」とか。
まあしかしアルバムを聴き進めていけば、そんな甘いケーキを食べた後の苦いエスプレッソコーヒーのような「カントリー・フィードバック」のような曲で、キリッと口直しもしていただけるはずだ。
↓ 全米4位となり、R.E.M.史上最高のヒットシングルとなった「ルージング・マイ・レリジョン」。
↓ B-52’sのヴォーカリスト、ケイト・ピアソンをゲスト・ヴォーカルに迎えた、アルバム中最もポップな「シャイニー・ハッピー・ピープル」。全米10位、全英6位の大ヒットとなった。MVもR.E.M.らしからぬ、ユーモラスなものに。
(Goro)

