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The Police
“Outlandos d’Amour” (1978)
パンク・ムーヴメントの余韻が残る1978年11月にリリースされた、イギリスの三人組、ザ・ポリスの1stアルバムだ。
「パンクのような3コードの単純すぎる音楽をやるのは嫌だったけど、レゲエは音楽的に洗練されてるし、パンク陣営にも受け入れられてるので、パンクとレゲエを融合させてみることにしたんだ」とスティングが語ったように、その当初からポリスの音楽スタイルは、戦略的な意図を持って練り上げられたものだった。「パンクもレゲエも好きだからー!」という単純なノリではなかったわけだ。
なにしろ、小学校の美術教師やジャズ・ベーシストという経歴を持ち、驚異的なヴォーカリストであり天才的なソングライターでもあるスティングと、元ジャズ・ギタリストで、アニマルズやソフトマシーンなどを渡り歩いたアンディ・サマーズ、元プログレ・バンドのドラマーで父親はミュージシャンでありながらCIAの設立メンバーでもあったというスチュワート・コープランドという、高度な技術と幅広い音楽性と高い教養と特殊な家柄を持つ3人の化学反応によって作り出された世にも斬新な音楽は、それまで英国を席巻していた「貧乏でバカなクソガキだってロック・バンドならやれるぜ」的なパンク・ムーヴメントの幻想が一瞬で色褪せてしまうほど、オリジナリティにあふれ、人々の耳目を惹くものだった。
やっぱり情熱と勢いとワン・アイデアだけでは、音楽的才能と技術を兼ね備えた熟練者集団が本気になったら敵わないものなのか。それはなんだか悔しい気もするけれど、この世に厳然と聳える冷徹な真実なのかもしれない。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 ネクスト・トゥ・ユー
2 ソー・ロンリー
3 ロクサーヌ
4 ホール・イン・マイ・ライフ
5 ピーナッツ
SIDE B
1 キャント・スタンド・ルージング・ユー
2 トゥルース・ヒッツ・エヴリバディ
3 俺達の世界
4 サリーは恋人
5 マソコ・タンガ
当時ステイング27歳、コープランドが26歳、サマーズが36歳という、すでに大人の見識を持ち合わせていた彼らは、当時流行のパンク・バンドのふりをして見せるという狡猾な手法で世に登場した。
この1stアルバムのジャケットも、レコード店の「パンク」の棚に入れられる気満々のデザインであるし、とりあえずA1の「ネクスト・トゥ・ユー」を試聴すれば、パンクスはほぼ全員買って帰るに違いない。
でも家に帰ってあらためてレコード・プレーヤーに乗せて聴いてみると、A2「ソー・ロンリー」でなんだか少し様子が違うことに気づくだろう。気に入るかどうか、そこから先は人によるだろうけど、なにか新しい時代が始まったことには誰もが気づいたに違いない。
まさにパンクの時代を終わらせ、ニュー・ウェイヴの時代の始まりを告げる、当時の英国ロック・シーンを激震させたアルバムだっただろう。
↓ アルバムのオープニングからいきなり全力疾走するミサイル・パンク「ネクスト・トゥ・ユー」。
↓ ポリスを一躍有名にしたA3「ロクサーヌ」。全英12位、32位のヒットとなった彼らの代表曲だ。売春婦に恋してしまった男の、切ないラブソングだ。
(Goro)