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Sonic Youth
“Daydream Nation”
エレキギターの刺激的なノイズを全身に浴びてリフレッシュしたい日にはうってつけのアルバムだ。
その昔、昭和の銭湯には「電気風呂」というものがあったが、あれのもっと激しいやつに浸かっているみたいな。大音量で聴けば、全身がピリピリして筋肉が収縮し、多幸感に包まれて、なんだか少しだけ気が遠くなるような気分になれる。
当時は”ニューヨーク・アンダーグラウンドの帝王”とも評されたソニック・ユースのインディーズ時代最後のアルバムである。その集大成にふさわしく、アナログ盤2枚組70分でリリースされた。そしてそれはまた、1960年代にヴェルヴェット・アンダーグラウンドが登場し、70年代にはN.Y.パンクが隆盛を極めた、N.Y.アンダーグラウンド・シーンの有終の美を飾る作品にもなった。本作をソニック・ユースを最高傑作に挙げる人も多い。
ソニック・ユースの代表曲のひとつとして知られるオープニング・トラック、「ティーンエイジ・ライオット」は、当時のモダンロック系のラジオでヘヴィロテとなり、彼らの名を一気に広めた。ソニック・ユース流のパンク・ロックで、なんとなくアンダートーンズの「ティーンエイジ・キックス」を連想しなくもないが、あっちが懐かしの屋台の味のラーメンなら、こっちは激辛蒙古タンメンぐらいの違いはある。
2本の変態チューニングのギターが奏でる不協和音とノイズが発光するように美しく、闇雲な疾走感が爽快だ。
有り余るエネルギーを攻撃的に、破壊的に撒き散らすようでありながら、しかしときには詩情が漂う、魂に共鳴するような幽玄な響きを味わえるのはソニック・ユースならではだ。
ギターとベースとドラムと声だけでこの豊かな表現力。ロックのさらなる可能性を追求する実験工房のようでもある。
パンクで、アートで、アヴァンギャルドで、インテリジェント。永遠の芸大生みたいな連中だったが、カッコ良くて憧れたなあ。
(Goro)