ライド/ライク・ア・デイドリーム (1990)

Play

【90年代ロックの快楽】
Ride

Like a Daydream (1990)

1990年にデビューした英国のバンド、ライドが1990年4月にリリースした4曲入りのEP『Play』に収録された曲。彼らの代表曲だ。

あまり中身の無い、ほぼ勢いだけの曲ではある。
しかし当時のわれわれは、この閃光のように目映い輝きと、一瞬で散ってしまう儚さのようなこの曲に、胸を貫かれたのだ。この曲には「青春そのもの」などというクサい形容がよく似合う。

初めてギターを手にした子供のように闇雲にかき鳴らす轟音ギターと、シンプルなのに滅法ポジティヴに、美しく聴こえる歌メロ。それ以外にはなにもないところが潔くて、感動的ですらあった。

技量も引き出しも無いからこういうシンプルな曲しかできないバンドと、それだけで充分!と受け止めることができたリスナーの、幸福な関係があったのだ。

彼らの、下を向いたまま無表情に、ギターを力まかせにかき鳴らす演奏スタイルは「シューゲイザー(靴を見つめる人)」と呼ばれた。

当時20代前半のわたしは完全に道に迷ったような人生を送っていたので、わたしも心は「靴を見つめる人」だった。

ちょうどこの時期に、飲み屋で偶然知り合った男がいた。わたしがカウンターで飲みながら、買ったばかりのrockin’onをペラペラとめくっていると、彼が声をかけてきたのだ。そして、ライドのこの曲が好きという話で意気投合したことを憶えている。彼は、明るくて社交的なくせに、わたしと同じように、やはり人生に迷っていた。そいつとは親友になり、今も家族ぐるみの付き合いが続いている。

いろいろ、思い入れの深い曲だ。

(Goro)